治療中は地獄…医師が語る「ここだけは絶対ケガしたくない」場所

覆面ドクターのないしょ話 第29回
佐々木 次郎 プロフィール

縫わなかった

幸か不幸か、ケガしたのが大晦日。縫ってもらうなら形成外科がいいと思っていたが、スキー場の付近には形成外科なんてなかったし、年末年始の連休で、縫ってくれる病院もなかった。だが、若いというのは良いものだ。仕事始めになるまで消毒だけして放っておいたところ、傷がみるみるうちに小さくなっていった!

「ラッキー!」

結局私は病院へ行かずにいたが、2週間もしたら、傷は完全にふさがってしまった。傷跡は少し目立ったが、私はあまり気にしなかった。気にしたのは周囲の人たちである。

 

特に教授にはさんざんお叱りを受けた。

「まったく、スキーに行ってケガしてくるとは! 大体ね、年末年始という一年で一番静かなときに、遊んでくるなんて言語道断! こういう静かなときは、机に向かって手術書を読む絶好の機会じゃないか。そんな貴重な時間をスキーに費やすなんて……」

部下の負傷への心配より、負傷の原因への怒りのほうが勝っているようだった。

「誠に申し訳ありません」

「それから、君ね、医者のくせに治療も受けないで傷跡を残すなんて、みっともないと思わんのかね! 今からでもいいから形成外科の先生に頼んで、手術の予約をしてきなさい!」

それから毎週、教授回診の度に、「君の手術はいつになったんだ?」と聞かれ、私は逃げ回り続けて半年。な、な、何と、傷痕がほとんど目立たなくなってきたのだ!

「なーんだ。形成外科に頼まなくても、傷ってきれいに治るんだなぁ」