金融庁に失笑が漂う「キラキラ人事方針」の謎

~PDCA、結果にコミットって…
現代ビジネス編集部 プロフィール

新長官への「挑戦状」

「監督局長だった遠藤(新長官)さんの昇格は既定路線でしたし、麻生(太郎財務・金融担当特命担当)大臣も東大教養学部卒の森さんを意識してか、『財務省の不祥事で、今年の採用では東大生が減っている。ここは王道人事がいい』と、東大法学部卒の遠藤さんを推していた。

しかし森さんと遠藤さんは、犬猿の仲と言っていいほど折り合いが悪い。森さんは『遠藤には絶対渡したくない』と言って、氷見野(良三・金融国際審議官)さんを次期長官に、と麻生大臣に進言していました」

最後の最後でスルガ銀行の不祥事とコインチェックの仮想通貨流出問題でミソをつけたこと、また財務省幹部からも遠藤氏を推す声が大きかったことから、結局、森前長官の意向は通らなかった。その代わりに、改革志向の前長官の執念は、この「人事基本方針」に全面的に反映された。いわば、金融庁職員に向けた「贈る言葉」なのだ。

 

うがった見方としては、前出の金融機関幹部が言ったように、「これは森前長官が遠藤新長官や財務省に向けて発した、一種の挑戦状なのではないか」とみる関係者もいる。「これからは、役所も役人もこれくらいやらなきゃダメだ」との宣言だということだ。

「森さんの哲学は、『これまでと同じことをやっていては、金融庁のみならず霞が関も、日本の金融機関も潰れてしまう』という強烈な危機感に基づいていました。それは地銀改革に最も顕著に表れていたのですが、一方で森さんは、地銀に関しては素人だったからこそ、大胆なことをやれた面もあるわけです。

後任の遠藤さんは、地銀に関してはスペシャリストです。森さんは『だから心配なんだ。遠藤は地銀に近いから、かえって見えなくなるところがあるんだ』と言っていました」(前出と別の金融庁職員)

「人事基本方針」の別添資料「局長クラス・課長クラスのコンピテンシー」には、「ダメな管理職の例」としてこのような項目が並んでいる。

・部下からの「振り付け」がないと動けない。

・部下から上がってきたペーパーを直してばかりで、部下の仕事に付加価値を付けられない。

・何も考えずに「脊髄反射」的に行動し、部下を混乱させる。

・「できない理由」や消極的な権限争いに終始する。

・リスクを取らずに人に押し付ける。上手くいかなかったら人のせいにする。

ビジネスマンなら誰もが、「確かに、こんな上司いるよなあ…」と言いたくなる内容だが、これが現場の愚痴ではなく、組織を去りゆくワンマンな前トップの「置き土産」だと思うと、ちょっと背筋が寒くなる。

森前長官の強烈な視線を背中に感じながらの船出となった、遠藤新長官の胸中はいかに。