絶滅動物の指の数もチェック!「マンガの監修者」は何をしているのか

『天地創造デザイン部』ここだけの裏話
多久和 理実 プロフィール

まず、『天デ部』の各話のストーリーは、神様がオーダーしたちょっと変わった生き物を作れるかどうかシミュレーションしてみるというところから始まります。このシミュレーションの部分は、現実の生き物の説明をするというより、材料の強度とか色彩を生み出す構造とか、意外と物理っぽい説明をすることになります。

マンガ家さんが仮の数値を載せたいと希望する場合には、根拠のない数値を出すのは嫌なので、類似例を探したり、発表されているデータを基に計算したりして、意地でも数値の根拠を出します。

このような作業は、これまでの物理学を中心にしたマンガの監修と同じように取り組むことができます。

意外に物理っぽい説明が多くなる意外に物理っぽい説明が多くなる

より実際的な点として、私は(生物学においては)特定の学説を支持しているわけではありません。そのため、ある生き物の特徴を説明する学説が複数存在する場合には、マンガ家さんが面白いと思うほうの学説をためらいなく採用することができます。

これは、もしも生物学の中の特定分野の専門家に依頼したら、たとえ一般ウケしそうな内容でもその人の主張から外れる学説を採用することはできません。実際に、「面白いけれど立場があるから協力できない」と専門家に言われたと編集者さんから聞いています。

もちろん、明らかに間違っていたり時代遅れだったりする学説であれば私でも指摘して取り除きます。けれども諸説ある場合には、たとえマイナーな学説であったとしても、マンガ家さんのストーリーに合っているほうを採用します。

その他の学説については、単行本に収録した「生きもの図鑑」で補足説明しておいて、興味がある方が読んでくだされば十分だと考えています。

その他の学説は「生きもの図鑑」で補足してバランスを取るその他の学説は「生きもの図鑑」で補足してバランスを取る

「ちょっとした間違い」が「OK」になる理由

先の説明で気付いた方もいるかもしれませんが、私は科学的な正確さよりもマンガ家さんのストーリーを優先する立場を取っています。

仕事のモットーは「マンガ家さんが目指しているストーリーを「より科学的に、できるだけ嘘がなく」 実現するためのお手伝い」です。「科学的に間違っているので、そのストーリーはダメです」とは決して言わないようにしています。

マンガ家さんは厳しいスケジュールの中で仕事をしています。「ダメ」と言ったところで妨害になるだけで、何も進まないのです。

間違いを指摘する場合には、同じストーリーを実現できるような代案を出します。マンガ家さんが目指している展開やオチを実現できる代案が見つからなければ、「間違っていてもそのまま掲載」という結果になりかねません。

なので、代案出しは本気で行います。「最低でも2パターン出して、マンガ家さんが納得するものを選べるようにする」というマイルールを課しています。

マンガ家さんのストーリーが最優先ですので、私はマンガの展開には口を出しません(そもそも、口を出すことを期待されていないと思います)。蛇蔵さんをはじめ、マンガ家さんは読者が「面白い」と思うツボをよく理解している方々です。

どんなテーマで新作を描いても「この作者の作品ならきっと面白いに違いない」と信頼して読者が付いてくるのは、マンガ家さんの「面白さ」を見極める力に対する絶大な信頼があってこそだと思います。