「在日朝鮮人」と虚偽投稿…ヤフーに削除・慰謝料命じる判決の意味

ヘイトをめぐるプラットフォームの責任
曽我部 真裕 プロフィール

ヘイトスピーチ対策の難しさ

ところで、今回の判決は、ネット上にあふれる在日コリアンに対するヘイトスピーチの1つである。

一口にヘイトスピーチといっても、その対策を法的に考える場合には、もう少し細かく分類をして検討を進める必要がある。

以下では、この点について少し述べた上で、今回の判決の意義について改めて触れる。

まず、当然のことながら重要な点として確認したいのは、インターネットでの表現の多くは、民間事業者の運営するプラットフォーム(掲示板やTwitter、Facebook等)の上で行われるということである。

したがって、プラットフォーム事業者は書き込みの削除やアカウント停止等を通じて表現活動に規制を加えることができる。ヘイトスピーチ対策の文脈でもプラットフォーム事業者の役割に注目が集まるのはそのためである。

〔PHOTO〕iStock

さて、ヘイトスピーチの分類が必要だと先に述べたが、法的に見て重要な区別の1つは、それが個人の権利を侵害するものか否かということである。

今回紹介した仙台地裁の判決は、個人の権利侵害となるケースであり、裁判手続を通じて削除や損害賠償を求めることができた。

典型的な例としては、在日コリアンの女性フリーライターに対する誹謗中傷を名誉毀損だとした今年6月28日の大阪高裁判決がある。

 

他方、ネット上には「●●人はゴキブリだ!」等々、(明示的にも暗黙理にも)個人を対象としていない書き込みも多数見られ、これらは特定のマイノリティ集団全体を貶めるものではあるが、マイノリティ集団に属する個々人(個々の法人も含む)の権利侵害ではないと理解される(したがって裁判的な救済は認められない)。

この区別は法律に詳しくない方々には理解し難いことだろうが、法律家には共有された考え方であると同時に、そこにヘイトスピーチ対策の難しさがある。

個々人の権利侵害だと捉えられない場合、民事裁判による救済は不可能であり、残る規制方法としては、行政による規制(例えば、プラットフォーム事業者に削除義務を課す、など)か、刑事罰(書き込んだ者を処罰するか、削除義務を怠った事業者を処罰する、など)といった方法が考えられる。