「地方創生」とは何だったか?移動しなくなった日本人が直面する課題

より良い生活のために考えるべきこと
貞包 英之 プロフィール

達成しがたい目的

まずそれらの達成可能性が、気楽には信じられないからである。

経済成長や人口吸引のために、観光で人を集め、産業を興すなどの自助努力や競争が各地方に課せられている。

しかし4年が経ってなお、はっきりとした成果は生まれていない。

たしかに「まち・ひと・しごと創生基本方針2018(案)について」という政府の点検では、若者の雇用者が地方で18.4万人増えたこと、また女性の若年(25~44歳)の就業率が69.5%(2013)から74.3%(2017)へ、第一子出産前後の継続就業率が38.0%(2010)から53.1%(2015)へ伸び、60時間以上働く雇用者の割合が8.8%(2013)から7.7%(2016)に減ったことが地方創生の成果として評価されている。

だがこうした断片的な結果だけでは、地方の経済成長や人口減少が和らいだことの証拠にはならない。意地悪くみれば、それでも成果が誇られているのは、むしろはっきりとした結果がないことを隠すためのようにもみえる。

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実際、点検がみずから白状しているように、東京圏への人口流出の超過は2013年から2017年でむしろ2万人増加している。

また合計特殊出生率も2015年をピークに1.45から2017年には1.43まで下がり(厚生労働省人口動態統計)、さらに点検では増加したとされた地方の若年雇用者も、労働力調査(総務省統計局)の年次別集計でみるかぎり減っている。

2014年から2017年の4年間で、15歳から34歳までの若年雇用者は、南関東と近畿を除いた地方圏で17万人減少しているのである。

ここからみれば、地方で経済成長や人口増加がみられたとは到底いえない。ただしそれは地方のせいとはいえない。経済停滞や人口減少を生みだす最大の理由は、多くの先進国に共通するライフスタイルというべきだからである。

一般に核家族化や女性の就業が進み、また生活が豊かになれば、教育を含む子供に対する消費が増加し、出生率は抑制されざるをえない。それが人口停滞を引き起こし、ひいては経済成長率を鈍化させる。

ほとんどの先進国でみられるという意味で、こうした変化は文明史的なものというべきだろう。

 

にもかかわらずそれに逆らい、経済成長や人口増加を推し進めようとするならば、「地方」に収まらない日本社会全体を対象とした大胆な改革――たとえばかつての「子ども手当」がそれを試みていたように――が必要とされる。

それを実行する代わりに、各地方に自助努力を求めたのが、「地方創生」だったといえる。経済成長や人口吸引のために、競争と挑戦が各地方に促される。

年間1000億円の「地⽅創⽣推進交付⾦」が自治体のプロジェクトに競争的に配分されている。また1兆円の「まち・ひと・しごと創生事業費」が「地域の実情に応じ」て支給されているが、これも成果に応じて分配し直すことが強く求められている。

結果として「勝ち組」が生まれメディアの注目を浴びるが、残りの多くの地域はただただ「負け戦」を強いられる。

にもかかわらず、多くの地方はその「結果」を引受ければならないのであり、この意味で、現在の地域創生は政府の責任逃れと「敗戦」のアリバイづくりとして、むしろ利用されている面が強いといえる。