ロンドンのカムデン・マーケットにあるカレー店(Photo by iStock)

インドじゃなかった!?「カレー粉発祥」の意外な場所

でも、なぜ…?

インドにカレー粉は「ない」

日本の国民食ともいえるカレー。その起源は、ご存じの通り、インドにある。スパイスが利き、ナンをつけて食べる本場のインドカレーもいいが、家庭でよく食べる「お母さんのカレー」もやっぱり美味しい。

同じ「カレー」だが、味もかたちも食べ方も違うインドカレーと日本のカレー。調理過程において、この二つのカレーの最も大きな違いは、いわゆる「カレー粉」を使うかどうか、だろう。本場のカレーはカレー粉を使わないのが一般的だ。

そもそも、昔からインドにはカレー粉を使う文化がない。クミンなどのスパイスをそのつど調合してカレーを作ってきたインドでは、今でもカレー粉を使う習慣はなく、スーパーマーケットなどにもほとんど置かれていないという。

インドの街の様子(Photo by gettyimages)

一方、我が国日本では、どこにでもあるポピュラーな食材だ。あの独特のとろみを出すカレールーもカレー粉を原材料としている。今や日本人の食生活に欠かせないカレー粉だが、意外にもその起源は、カレー発祥の地から遠く離れたヨーロッパ、イギリスにある。

インドからイギリスにカレーが伝わったのは18世紀。当時、インドはイギリスの植民地だった。初代インド総督を務めたヘースティングズが、現地にあった物珍しい料理「カリ」を持ち帰ったのが、イギリスにおけるカレーの始まりだ。

 

当初、カレーは上流階級の人々の食事であり、ヴィクトリア女王のお気に入りメニューでもあったという。こうした貴族向けの食事を請け負っていた英国の食品会社がクロス・アンド・ブラックウェル社だ。C&Bといえば、聞いたことがある人も多いだろう。

Crosse & Blackwell社のポスター(Photo by gettyimages)

C&Bは調理の手間を省くため、あらかじめ多くのスパイスを調合して、カレーを作っていた。このカレー粉の元祖といえる食材を「カレーパウダー」と名付け、一般向けに販売したところ大ヒット、瞬く間にイギリスの家庭料理として普及した。

その後、カレー粉は世界各国にも広がっていき、日本には明治期に伝わったとされている。(井)

『週刊現代』2018年8月4日号より