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佐藤さんと鈴木さんを全員合計しても、日本人の4%に満たなかった

名字に見る日本文化・社会現象の多様性
日本人は天皇家以外誰もが姓(名字)を持つ。日本人の姓の種類は10万種を超え、世界でもこれほど多い国は珍しい。近年、関心が高まりつつある日本人の「姓」について、早稲田大学の笹原弘之教授が「意外な数」を教えてくれた。(『新鐘』No.84掲載記事より)

日本人の姓の種類は10万種超え!

毎日たくさんの人と接するため、びっくりする姓(名字)にも出会う。

「勘解由小路」(かでのこうじ)、日本で一番漢字数が多い姓の一つだ。「東麻生原」(ひがしあそうばら)、読み仮名が最も長い姓の一つだ。2人、3人しかいない姓にも出会う。

それに対して同じ漢字圏に生まれた留学生は、1字姓がほとんどで、それも中国ならば「王」「李」「張」で全体の2割以上を占める。韓国は「金」「李」「朴」で4割以上、ベトナムは「グエン(阮)」「レ(黎)」「チャン(トラン 陳)」で過半数と、特定の姓に集中している。

人口が多い名字のトップ3人口が日本一多い姓が何なのか、 実は政府からの発表はなく民間でさまざまに推計されてきた。
参照 http://www.taishukan.co.jp/kokugo/webkoku/series004_07.html

日本は、何事につけ文化・社会現象に多様性が見出せるが、姓も例外ではない。

「佐藤」「鈴木」が多いといっても、それぞれ人口の2%にも及ばない。それも西日本に行けば、学校のクラスに一人もいなかったりする。

姓の種類は10万種をはるかに超えており、世界でも指折りの多さを誇っているのである。

10倍の人口を擁する中国は4700種ほどしかなく、日本の半分強の人口の韓国・北朝鮮となると、その10分の1ほどにすぎない。

「月見里」「小鳥遊」の由来って?

日本人の姓には、「田」という字が最も多く使用されている(『JIS漢字字典』初版)。日本は固有語である和語を訓読みにして大量に姓に取り込んだ。農村の土地に名が与えられて地名となり、それが姓とされたケースが多いためだ。

続いて「藤」が2位。これは、古代に奈良の藤原という地名を中臣鎌足が天智天皇から姓(かばね)として賜ったことが起源である。こうした自然物が一族の姓に選ばれる傾向が強い点は日本らしい。

地名には見られない漢字や読み方も見られ、「木」の枝をもいだ「●※1」で「もぎき」、絞り染めの名の「纐纈」は「こうけつ」、さらに「はなぶさ」と読む家系もある。

もぎき※1「もぎき」

「月見里」は山がないから月が見える里という謎かけで「やまなし」(神社の名前にもある)、「小鳥遊」は鷹がいないから小鳥が遊べるということで「たかなし」。

これらの姓は明治の新姓ではなく、江戸時代以前から存在した。

「斎藤」と書いてナカジマと読む?

「坂本」姓は近畿では「阪本」、鹿児島では「坂元」といった地域差も見つかる。

字体へのこだわりも発揮され、細分化が進む。「髙橋」などの「髙」は、江戸時代に普通だった字体が戸籍に記されたものだった。

「吉田」も同様なのだが、農家なら「●※2」、武士なら「吉」だった、とよく後付けが説かれる。

よし※2「よし」

「山﨑」などの「﨑」はJIS漢字になかったために「文字化けしてラーメンの絵文字で表示された」と学生が嘆いていた。

国字の「辻」の字が本家と分家とでしんにょうの点の数が分かれていると語った人もいる。