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血糖値が「見えすぎる」SFみたいな最新機器で人類はこう変わる

変化する私たちの「身体観」

2017年9月、糖尿病患者さんのための新しい血糖測定器 ”Freestyle Libre”、通称「リブレ」が日本でも保険適応となった。

「リブレ」は従来の常識をくつがえし、血液を採ることなく手軽に血糖測定ができる夢のようなデバイスだ。頻回の測定が気軽にできるだけでなく、測っていない時間の血糖もメモリに記録し、あとからグラフで振り返ることができる。患者さんにとって点の情報でしかなかった血糖値は、線の情報として「見える化」された。

この「見える化」、単に便利なだけでなく、それ自体に治療的な効果があることもわかってきた。値がよく見えることは、よく管理することにつながるということだ。

とはいえ、見えすぎることもまた問題をはらんでいる。自分の意思などおかまいなしに暴れる血糖値を目の当たりにし、恐怖を覚える患者さんは少なくない。それは他ならぬ自分の身体すら、制御できない恐怖である。

そう、この血糖値と向き合ううちに、患者さんはそれが確かに自分の身体の一部であることを知らされる。新しいテクノロジーは、私たちの身体観を書き換えようとしている。大げさだろうか? 

しかし、単に「便利になった」というだけで済ませてはいけないはずだ。テクノロジーはそれを駆使する者によって、真摯に批評されなければならない。

 

血糖を「ゲーム」のように管理する

「先生、これ、ゲームみたいで面白いですね」

明るい顔で外来ブースに入ってきたAさんは40代男性、1カ月前にリブレを導入した、1型糖尿病の患者さんだ。血糖値が食後にどのように上がり、インスリン投与でどのように下がるのかつぶさに目の当たりにした彼は、血糖管理をゲームのように理解しつつあった。

リブレで血糖値を把握できる

糖尿病には1型と2型があって、いわゆる「生活習慣病」としての糖尿病は2型に相当する。一方の1型糖尿病は、体内で血糖を下げる唯一のホルモン「インスリン」が分泌できないためにおこるものだ。

食事・運動だけでも改善する2型と比べて、1型の血糖管理は高度なテクニックと経験を要求する。

しかし、血糖の推移をリアルタイムで見ることができれば、それはずいぶん楽になる。

何を食べると血糖値が大きく上がってしまうのか、何をどのように食べれば上がりにくいのか、自分が好きなものを食べるために、インスリンはいつどのくらい打てばいいのか、血糖値を下げるための運動はいつするのが良いのか……自分にとってベストな治療法を見出していく彼に、あくまで一般論でしかアドバイスできない治療者の役割は徐々に減っていった。