時代遅れ…?広告クリエイターは「広告ではない何か」を創造できるか

~とあるクリエイターの問いかけ
三浦 崇宏 プロフィール

何をクリエイトするのか

かつて、広告クリエイターは広告を作っていればよかった。新聞広告、駅や街中にはるポスター、テレビCM、ラジオCMなど、広告はメディアの形式に規定されていたからだ。しかし、インターネットの普及とともにデジタルのプロモーションを考える必要が生まれた。

企業や商品のWEBサイト、WEB動画、SNSでバズるための仕掛け、イベントを含む体験設計も重要だ。最近では商品開発の相談も増えている。メディアのあり方が多様化している中で、当然、広告クリエイターが作るべきものもまた多様化している。

これをピンチと捉えるか、チャンスと捉えるかで、クリエイターのスタンスが分かれる。電通や博報堂の現場のクリエイターたちと会話していても、実際に多様なアウトプットを求められる現状を楽しんでいる人もいれば、面倒に感じる人々もいる。

ただ、生物の進化の歴史において多様化が重要な役割を担ったように、今こそが広告クリエイターにとって進化する絶好のタイミングと考えた方が良さそうだ。

 

CMとポスターだけ作っていればよかった時代を、黄金時代だと懐かしむ人々もいるにはいるが、広告クリエイターにとっての本当の黄金時代はこれからやってくる。そう確信して、ぼくは博報堂から独立、GOという会社を立ち上げた。弊社では、ポスターも作る、CMも作る、アート展も開く、WEBメディアも立ち上げるし、シャンプーも作る。

では、これまでポスターやテレビCMを作る仕事だったはずの広告クリエイターが、どうやって多様化する課題に応え得るのか。それは、“ぼくたちの本質的能力は何か”という問いでもある。「映像を作る力」でも「ポスターを作る力」でもない。広告クリエイターの本質的能力は「企業やブランドの価値を、生活者に届くよう翻訳すること」である。

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企業の事情なんて、生活者にはどうでもいい。毎日忙しいし知りたくもない。そんな人々に対して、難しいことを簡単に。つまんないことを面白く。関係ないことを人生にとって重要なことに……どうにか翻訳して届ける。社会の機運や生活者の感情を汲み取りながら。この翻訳のことをコンセプトと言ったりする。それを言葉でアウトプットするのがコピーライターであり、ビジュアルでアウトプットするのがデザイナー、映像でアウトプットするのがCMプランナーと考えれば良い。

このことを理解し、実践できる技術を持った広告クリエイターは社会やメディアがどんなに変化しようとも、クライアントのビジネスの成長に貢献できる。デジタルも、体験も、商品開発も、どれも企業価値を生活者に届けるための翻訳であることは変わりないからだ。

博報堂のクリエイティブ専門の子会社である博報堂ケトルは「恋と戦争は手段を選ばない」という社是を掲げている。