時代遅れ…?広告クリエイターは「広告ではない何か」を創造できるか

~とあるクリエイターの問いかけ
三浦 崇宏 プロフィール

忘れられない言葉

広告クリエイターというのは、テレビCMの企画を考えたり、新聞広告のコピーを書いたりグラフィックを制作する企画者のことだ。最近ではWEBサイトやSNSの企画を考えることも多い。とにかくクライアントの商品を広め、売るための企画を考える仕事だ。

電通や博報堂といった大手の広告会社では「制作/クリエイティブ」という部署がある。これが実際なかなか狭き門で、就職活動でいうと、倍率100倍以上と言われる電通や博報堂に入社した新卒100名程度のうち、1ヵ月に及ぶ研修の結果、適性を判断されて10名程度が晴れて広告クリエイターになれる。

クリエイターというのは総称で、実際にはコピーライターとデザイナーとCMプランナーの三つの職種に分かれ、さらに10年から15年程度働いて実績を積むと、広告制作の責任者である「クリエイティブディレクター」(通称CD)という職種になれる。このCDの元にプロジェクトごとにチームを編成して広告を企画することになる。

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今はどうかわからないが、ぼくが入社した頃の話をすると、クリエイティブの新人の下積み時代は過酷だ。例えばコピーライターなら明日までにコピー100本書いてこいよ、なんてことは朝飯前の前の前の前だし、その100本を15秒くらいで上司にパラパラと見られて全ボツなんてことも日常茶飯事だ。24時より前に家に帰れることなんてほとんどない。新人コピーライターへの先輩からの入社祝いが寝袋だったという笑い話のような実話がある。

 

ただ、しんどいなりに広告の企画をチームで考える仕事はめちゃめちゃ楽しかった。上司も面白い人が多くて、ダメ出しされて死にたいみたいな気持ちになった次の瞬間にはゲラゲラ笑わされていた、みたいなこともよくある。かつての博報堂のクリエイティブのフロアは愉快な野戦病院みたいだった。

ニコニコしながらぶっ倒れている若者と、ビールを飲みながら打ち合わせしている豪快なおっさんたちがたくさんいた。とても会社には思えなかった。でもそこから誰もが知っている、時代を代表するような広告がたくさん生まれた。企業の急成長や社会現象がスタートする現場でもあった。

博報堂の先輩に言われた言葉で忘れられないものがある。

「クライアントは、俺らなんかよりもはるかに自分たちの商品、自分たちの市場のことを研究してるんだから、正しい答えなんてのはみんなわかっているんだ。だけど、現実のビジネスは、正しいだけでは突破できない時がある。だから俺たちの出番なんだ。“正しい”を超える“面白い”を生み出すのが俺たちの仕事なんだぜ」

今も“面白い”を生み出す仕事なのは変わらないが、“面白い”の形は、あの頃とだいぶ変わっている。変わり続けている。