アメリカとEUが大モメに揉めるなか、日本政府がいま選ぶべき道

大きな岐路に立たされている

調印式が先週火曜日(7月17日)に終わり、来年3月下旬にも、日EU経済連携協定(EPA)が発効することになった。調印式直前に開かれた日EU定期首脳会議では、恒例の共同声明を採択しただけでなく、政治や経済、環境など幅広い分野で協力するという「戦略的パートナーシップ協定」を締結するなど、EUによる日本との連携強化の演出が目立った。

経済力で世界2位のEUが4位の日本と自由貿易体制死守で足並みを揃えて、1位のアメリカや3位の中国の保護主義と対峙、激化する貿易戦争を乗り切るというのである。

一方、アメリカのトランプ政権は相変わらずだ。クルマへの高関税上乗せなどを掲げて、通商相手国に対米貿易黒字の削減を迫る恫喝外交を続けている。また、習近平中国は「中国製造2025」を掲げてハイテク国家世界一の座を伺い、なりふり構わぬ技術移転を押し進める姿勢を変えようとしない。

第2次世界大戦後、初めて自由貿易体制が大きく揺れ動く中で、日本にどんな選択肢があるのか考えてみたい。

 

単なるリップサービスではない

EUのトゥスク大統領は、EPA調印式の終了後に首相官邸で開かれた共同記者会見で、「欧州と日本は地理的には遠く離れているが、日本とEUが政治的にも経済的にも、これ程までに近づいたことはない」と日本とEUの連携を誇示した。次いで発言したユンケル欧州委員長も「今回のEPAは、世界に対して範を示すものである」と、名指しはしないが、この協定の掲げる自由貿易体制の堅持・拡大こそ、米国や中国に必要だと示唆した。

EUも対米関係が極度に緊張状態にあり、そのツートップの発言は、日本向けの単なるリップサービスとは考えにくい。そもそも、今回のEPAの調印は、6日前に、ベルギーのブリュッセルで行う予定になっていた。安倍総理が西日本各地を襲った豪雨への対応を優先して、ヨーロッパ・中東4カ国訪問を中止、調印をドタキャンした経緯がある。

それにもかかわらず、EU側は当初伝えられたユンケル委員長だけでなく、トゥスク大統領も中国経由で来日した。半年以上も前に交渉に妥結していただけに、今さら感もあった。それでも、EUはあえてツートップが顔を揃えてセレモニーに出席し、日本との蜜月ぶりを演出した。両サイドは協定の批准手続きを急ぐという。

交渉開始当時を振り返れば、これほどEU側がこのEPAに入れ込むことはないはずだった。というのは、日本は遥か以前に、自発的に工業製品の輸入関税を撤廃しており、EUには日本と自由貿易協定を結んで何かを獲得するインセンティブがなかったからだ。この結果、両者の間には、ある種の不平等条約状態が放置されていた。

漁夫の利を得たのは、EUとの間で相互に貿易品目の99%の関税を撤廃するFTA(自由貿易協定)を2011年7月に発効させた、お隣の韓国だった。当時、EUとの通商で、韓国勢は日本勢を圧倒した。自動車を例にとると、EU域内の乗用車販売台数は2011年後半にヨーロッパ車が前年同期に比べ0.5%減の409万9034台、日本車が7.2%減の75万1120台だったのに対し、韓国車は18.3%増の33万4898台とシェアを急増させたのである。