林真須美の4人の子どもたち

和歌山カレー事件「死刑囚の子どもたち」が生きた20年

「人生の汚点やわ。顔も二度と見たくない」

1998年7月25日に発生した和歌山毒物混入カレー事件。事件から2ヵ月半後の10月4日、現場近くに住む林健治(当時53歳)、真須美(同37歳)夫妻が、保険金詐欺関連の容疑で逮捕された。

健治は容疑を認め、2005年に刑期を終えている。一方真須美は、カレー事件における殺人と殺人未遂の容疑で再逮捕され、2009年に死刑が確定した。有罪の決め手となったヒ素鑑定に問題があったことは、前回触れたとおりである(「和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか」)。

今回は、ある日突然、両親が逮捕され「死刑囚の子ども」と言われながら育った4人きょうだいの20年をふり返る。

家族全員がそろった最後の日

1998年10月4日。早朝5時前に自宅2階の自室で目を覚ました林家の次女(中2。学年は当時。以下同)が、ただならぬ予感に窓を開けると、おびただしい数のライトが自宅を照らしていた。

すでに2ヵ月前から報道関係者が自宅を取り囲んでいたが、その日は脚立に乗ったカメラマンがぎっしりと横に並び、こちら側を向いていた。

林夫妻逮捕の“Xデー”がこの日だと知った報道関係者が、逮捕の瞬間を待ち構えていたのである。その数500人、上空には10機を超えるヘリコプターが旋回していた。

 

次女は慌てて長女(中3)を起こし、長女は階下で寝ていた真須美を起こした。真須美は2階から外の様子を確認すると、長女だけを一番端の部屋へ呼び、「もしかしたら捕まるかもしれんけど、パパもママも何もしてないから、すぐ帰ってくる」と伝えた。

長女が「ほんまはどっちなん?」とカレー事件への関与について尋ねると、真須美は「おまえはアホか! やってるわけないやろ」と叱った。

その直後、「林さん、林さん」と玄関が叩かれた。真須美は「はーい」と返事をすると、財布から3万円を出して長女に渡し、階段を下りていった。

入れ替わるようにして女性警察官が2階へ上ってきて、子どもたちに数日分の着替えを用意するようにと伝えた。つけっ放しにされていたテレビの画面には、両親が警察の車で連行される様子が映し出されていた。

林宅に家族全員がそろっていたのは、この日が最後だった。

4人の子どもたちは児童養護施設へと連れて行かれ、空き家となったあと落書きされるに任せた家は、2000年に放火され、全焼してしまう。