# クレプトマニア

貯金2000万円の女性看護師を万引きに走らせた「窃盗症」の恐怖

150~300人に一人、他人事でない
長嶺 超輝 プロフィール

「盗むとき、恐ろしい顔つきになっていた」と供述

摂食障害までいかなくとも、厳しいダイエットに励んでおり、1日1食しか食べなかったり、体重の増減が激しかったり、理想の体重へのこだわりが強い人が、クレプトマニア患者へ移行するリスクも指摘されている。

最近、私が東京簡易裁判所の法廷で目の当たりにしたのは、30代女性看護師が、スーパーでシリアルを万引きした事件である。被告人には、約2000万円の預貯金残高があるらしく、シリアルを買えないわけではない。

 

しかし、「この店は規模が小さいので、警備が手薄そうだ」と、万引き道具のトートバッグを持ちこみ、計画的に犯行に及んでいる。カモフラージュのため、違う商品をレジを通して購入した上で店を出て行く念の入れようである。

実際には、その犯行の一部始終が店側にマークされていた。現行犯逮捕した警備員は、被告人のことを「かわいらしい女性だが、盗んでいるときには恐ろしい顔つきになっていた」と供述している。

この被告人は、まさに摂食障害の治療中だった。

供述調書や被告人質問で現れた彼女の話を総合すると、「食べてもどうせ吐いてしまうから、食べ物にお金を払うのがもったいない」という意識が背景にあったようだ。それを前提にすると、本人にとっては食料品を万引きしたくなるのは「合理的」だったのかもしれない。もちろん、店側にとってはたまったものではないのだが。

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この事件では、店側が1万円の示談金のみを受け取り、「処罰は求めない」との意思を表明している。もっとも、検察官は懲役1年を求刑し、最終的には執行猶予付きの有罪判決が出された。

そもそも犯罪と刑罰について定められた刑法は、ある人が犯罪を犯したときに処罰されるべき根拠としての「責任能力」について、以下のふたつの能力に分けて考える。

① 物の分別や、行動の善悪がわかっている「事理弁識能力」
② 自分の言動を自身でコントロールできる「行動制御能力」

このふたつが備わっているにもかかわらず、あえて法を破って罪を犯したのなら、刑罰を科して責任を取らせて構わないものと考える。

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