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# クレプトマニア

貯金2000万円の女性看護師を万引きに走らせた「窃盗症」の恐怖

150~300人に一人、他人事でない

30万円を所持しているのに、万引きした主婦

もう、10年以上前の出来事になる。

私は、とある裁判を取材するため、四国に1週間滞在し、徳島地方裁判所に月曜から金曜まで通い詰めていた。

取材の合間で時間が空くたび、その時間帯に行われている別の裁判を飛び込みで傍聴することを繰り返していた。そのとき、たまたま居合わせた窃盗事件の裁判が、今でも忘れられない。

 

中年の主婦が、スーパーマーケットで食料品を万引きしたという、裁判所の中ではありふれた事件だ。

ただ、逮捕直後の様子を記録する警察官の報告書や、取調室での被告人の話をまとめた供述調書の内容に、とうてい聞き流せない箇所があった。

「犯行当時、被告人は現金30万円を入れた財布を所持していた」という部分である。

30万円を持っていながら、店員や警備員の目を盗んで、棚に陳列されている食料品を万引きする。仮に守銭奴だとしても、度を超している。

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被告人が犯行に及んだ背景が、私にはまったく理解できなかった。なぜなら当時、「クレプトマニア」の存在を知らなかったからだ。

今にして思えば、その主婦は、ひょっとするとダイエット中で、厳しい目標を立てて頑張っていたのかもしれない。

あるいは、社会的評価や家庭内での愛情などに、強い渇望をおぼえていたのかもしれない。