ZOZO前澤社長がいま明かす「私の幸福論、仕事の哲学」

起業から20年の節目に
中原 一歩 プロフィール

曖昧だからこそ

――前澤さんにとって商売上のライバルや、意識する起業家はおられるんですか?

前澤:競争相手は、いないですね。競争すると冷めちゃうんですよ。僕、ゴルフが好きなんですが、勝敗を賭けの対象にしたり、何が何でも自分が1位になろうとする人がいるとダメ。楽しみで仲間とゴルフやってるのに、そこで勝ってどうするの?って思ってしまう。

会社の経営も同じで、その人が心から楽しいと思ったものに突き動かされて達成した結果のほうが、絶対に本人の自信になるし、伸びしろがある。結局、競争で煽ってやらせても、必然的に弱者や敗者が生まれてしまう。会社の場合、その手当もしなければならず、その分コストもかかる。そう考えると、競争させないほうが儲けも出るし、経済合理性が高いと考えているんです。

――競争で人の心を動かそうとするコンセプトそのものが、経済合理性を考えても非効率という考えなんですね。そのほうが儲かるという実感が最初からあったんですか?

前澤:いや、それは会社を経営する中でたどり着いた結論です。僕の場合、競争しないという信念がブレたことは、創業以来、一度もありません。そもそも高校の同級生のバンドメンバーと、当時つきあっていた彼女と始めた会社ですから。競争意識も全くないし、みんなで儲けは山分けだよね、という感覚でやってきました。

僕はよく「みんなでキャンプに行く感じで仕事をしてる」って言うんです。仲間内でキャンプに行ったら、得意な人が火を起こして、魚を釣って、テント張るじゃないですか。自分の得意分野で、キャンプにおける自分の担当は自然と決まる。それに魚が5匹釣れれば、それをみんなで分けるじゃないですか。その釣れた魚がボーナスだとすれば、当然、そのメンバーで分けるという考え方で僕は仕事をしているんです。

だから魚を釣ったやつが偉いわけでもないし、テント張ったやつがダメなわけでもない。みんなで集まったんだから、みんな平等に楽しめばいいじゃん、というのが基本的な考え方です。

お金のために働いても、モチベーションは持続しません。目の前のニンジンを食べてしまうと、次のニンジンがないと働かなくなってしまう。だからうちの会社では、給与に差をつけたり、ニンジンをぶらさげたりして社員を動かすというのは、極力、したくないんです。それよりも働くことの根源的な意味を早く体感してほしいと思っています。

 

――その場合、具体的に社員の方の評価はどのようにされるのでしょうか?

前澤:普通の会社だと四半期ごとに評価シートがあって、人事担当が面接をすると思うのですが、うちは評価そのものをしない。ただ、仕事の発注依頼が増えてくるやつは、結果、社内からも相対的に評価され仕事が集まってくるし、同僚や部下から多くの相談が持ち込まれる。そういう人がなんとなくリーダーになり、管理職が生まれて……。キャンプの時もなんとなくリーダーが生まれるじゃないですか。そういうイメージです。

――そうしたイメージが会社の骨格を作っているんですね。ただ、見ようによっては曖昧にも見えますが……。

そうです。曖昧です。曖昧だからこそ、誰も文句のつけどころがない(笑)。そもそも評価なんてあってないようなものじゃないですか。全ては自分ではない誰かの価値観によって判断されている。そのこと自体に無理があると思いますね。人間は神様じゃないんだから。そんなことに時間をかけているんだったら、お客様のために、社会のために何ができるか考えたいんです。

僕は学校が嫌いだと言いましたけど、その理由も同じなんです。例えば、答えが一つしかないような数学であればともかく、例えば国語や音楽、道徳の点数なんてつけられるんですか。私たちは誰かの決めた価値観によって子どもの時から評価され続けています。この国は、こうした教育を変えないと変わらないと思います。