撮影:吉場正和

ZOZO前澤社長がいま明かす「私の幸福論、仕事の哲学」

起業から20年の節目に

夢は「世界平和」と言い切る男がいる。

2017年度の年商(商品取扱高)は2705億円。業績は2007年の上場以来、11期連続の増収増益。国内最大のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する「スタートトゥデイ」改め「株式会社ZOZO」(2018年10月に社名変更予定)代表取締役社長・前澤友作(42)は、世界中の全ての人が「幸せ」であることが、自分自身の幸せと絶対的に重なると譲らない。

前澤社長に、企業拡大の先に見据える独自の「幸福論」について話を聞いた。

人生を激変させた出来事

――今年10月に、会社の名前をスタートトゥデイから「株式会社ZOZO」に変更することが決定されました。第二創業期を迎えたわけですが、これを機に改めて前澤さんの「原点」についてお聞きするとともに、この殺伐とした時代に「幸せって何だろうか」を読者が考えるために、前澤さんの「幸福論」について伺いたいのですが。

前澤:僕が起業したのは1998年ですから、今年、弊社は創業20年目を迎えます。振り返るには、ちょうどいいタイミングかもしれませんね。

会社を立ち上げる前、僕は高校時代から始めたバンド活動に没頭していました。そして、プロドラマーになって、メジャーデビューするという大きな夢を抱いていました。だから、大好きな音楽活動を続けるためにはどうすればいいか、そればかり考えていたんです。

そこで、海外で自分たちが聞きたいCDやレコードを買い付けてきて、自分たちでカタログを作って通信販売することを思いつき、有限会社「スタート・トゥデイ」を立ち上げました。これで儲けることができれば、音楽活動を続けていけるなと思ったんです。ただ、リアルな店舗を出すのはお金もかかるし、リスクも高い。

一方、ネット通販であれば店舗もいらないし、音楽活動と並行して運営できる。当時はネット通販が珍しくもあったので、これが結構うまくいったんです。商売が回るようになったので、創業の2年後にはアパレルの領域に進出し、現在の「ZOZOTOWN」の原点ともなるファッション専門の通販サイト「EPROZE」を立ち上げました。

あの頃の僕は、起業して社長になったといっても、ドラムスティックを握っている瞬間が一番幸せでした。社会人としての経験も未熟で、足元もおぼつかないまま、中途半端に「音楽」と「会社」という二足のわらじを履いていたんです。

そんな時に、人生を激変させる出来事が起こりました。ニューヨークの貿易センタービルに、二機の飛行機が突入した、同時多発テロです。

 

ちょうど会社から車で自宅に戻る途中、カーナビであの映像を見たんです。これは現実に起きていることなのか……と自分の眼を疑って、車を路上に止めてニュースに釘付けになりました。真っ青なニューヨークの空にそそり立つ、2つの巨大なツインタワー。そこにハイジャックされた飛行機が突入していく。

映像を見ながら、なぜ犯人はあのような大惨事を起こしたのか。なぜ、罪もない人が事件に巻き込まれないといけないのか。感情が高ぶり、様々な疑問が胸の内に沸き起こったんです。

それまで、「戦争が起こるのは仕方がない」と思っていました。けれども、大勢の人が一瞬で命を奪われる惨劇を目の当たりにして、改めて人間の意志と行動について考えさせられました。「なぜ戦争は起きるのか」「どうしたらなくなるのか」「世界を平和にするにはどうすればいいのか」。自問自答する中で、戦争やテロの背景にあるお金の問題に関する本を貪り読むようになります。

当時、僕は25歳。起業して3年目。社会人3年目って、漠然と「自分は今後、どのような人生を歩むのか」って深く考える時期じゃないですか。僕の場合、その時期とあの事件がぴしゃと重なったんです。経営者である僕にできることは企業活動を通じて、社会に貢献する選択しかなかった。大好きな音楽を続けるために何となくやっていた会社でしたが、この事件をきっかけに、それまで明確じゃないまま続けてきた会社のあり方を、いま一度、考え直すことにしたんです。