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「わかりやすさ」とは何か?〜『相手に「伝わる」話し方』を考える

現代新書 特別エッセイ「自著を語る」

「わかりやすい解説」の秘訣は…?

テレビの前の視聴者に、複雑なニュースをわかってもらいたい。どんな工夫をすればいいのか。

そればかりを考えていた私の前に、講談社現代新書編集部の堀沢加奈さんが現れたのは、2001年のことでした。

「わかりやすい話し方の本を書いてほしい」という注文でした。私はハタと悩みましたね。そんな発想がなかったからです。

堀沢さんの説明は続きます。

「池上さんは、テレビでわかりやすい解説をしている。その秘訣、工夫はどういうものなのか。それを公開してくれれば、きっと読者にも役に立つ」

堀沢さんの説明は要領を得ませんでしたが(ごめんなさい)、趣旨は伝わりました。

堀沢さん自身が、「自分は話し方が下手だ」と自覚していて、役に立つ本を探していたというのです。でも、見つからない。それなら、誰かに書いてもらおう。きっと、こういうことだったのでしょうね。

私も、「こういう種類の本を読みたいなあ」と探しても発見できない場合、「じゃあ、自分で書いてしまおう」と考えてしまいます。それによって、何冊もの本が生まれました。

 

わかりやすさ、伝わりやすさとは何か

自分が読みたい本をつくる。これは、編集者にとっても、著者にとっても、理想的な仕事のスタイルです。著者の私も、それがわかっているだけに、堀沢さんの依頼を無下に断れず、取り組むことにしました。こうして生まれたのが、『相手に「伝わる」話し方』でした。

刊行当時の装丁

書名に入っている「伝わる」という言葉には括弧がついています。相手に伝わるとは、どういうことなのか。そんな問題意識を持って書かれたことを示しています。

この本に取り組んだ結果、続編として『わかりやすく〈伝える〉技術』『〈わかりやすさ〉の勉強法』が生まれ、計3部作となりました。思ってもみなかったことです。その後、『学び続ける力』も誕生しました。それだけ読者に受け入れられたのです。

『相手に「伝わる」話し方』は、私が当時担当していたNHKの「週刊こどもニュース」での体験が基本になっています。さらに、そこまでに至る私のテレビでの仕事の経験を振り返ることによって、わかりやすさ、伝わりやすさとは何かを追究しました。