撮影:立木義浩
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96歳のいまでも毎晩、ひとりでお酒を愉しんでいます。

タリスカー・ゴールデンアワー第16回(後編)

提供:MHD

⇒前編【京都・寂庵で96歳の瀬戸内寂聴さんとスランジバー!

(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)

シマジ: 今東光大僧正は法名を「春聴」といいましたが、弟子である寂聴先生はその「聴」をいただいたんですよね。

寂聴: そうなの。最初は「春」をあげると言われたんです。きっとわたしが女だから「春」をと考えてくださったようなんですが、わたしは「春」はもう結構、飽きましたと言って、先生の「聴」をくださいませんかとお願いしていたんです(笑)。

そうしたらしばらくして、あるとき今先生から電話がかかってきて、「瀬戸内、お経を上げてたら、パッといいのが閃いたんだ。『寂聴』はどうだ。なかなか『寂』が浮かばなくて大変だったよ。お前さんも仏門に入ったんだから、1人でいるときは慎むんだな」と言われました。

そんなわけで「寂聴」という法名をいただいたんですけど、いい名前でしょう。わたしは凄く気に入っているんですよ。

ボブ: 静寂の「寂」ですよね。

寂聴: ボブさん、どうしてそんなことまで知ってるんですか。あなたの日本語力には驚きです。

ボブ: 恐縮です。まあ、こんな顔ですが、じつは高校生のころから日本にいますもので(笑)。

シマジ: お経といえば、こんな話があります。今東光大僧正は1人でいるときは、部屋に鍵をかけないんですね。ある夜、平河町で打ち合わせを終えたわたしは、大僧正に急にお会いしたくなって訪問すると、やっぱり鍵はかかっていませんでした。ノックして部屋に入ると、上等なお香の高貴な香りが部屋中に立ちこめていて、そこで今先生は何やらお経を誦されていました。

わたしは驚いて、「どうしたんですか!?」と尋ねると、先生は「今夜は具合が悪いんで元気が出るお経を上げているんだよ」と仰ったんです。わたしは悪いことをしたと思ってさっさとお暇したんですが、それがちょうど入院される1週間前のことでした。

寂聴: でも、今先生はそんなお経を知っていらしたのかしら。

シマジ: ちょっと待ってください。今先生は大僧正ですよ。中尊寺の貫主にまでなられたお方ですよ。

寂聴: だってね、今先生が当番でお経の講義をしないといけない式典があったんですよ。

シマジ: 比叡山の麓でやった戸津説法のときですね。

寂聴: そうそう。わたしは弟子だから、一緒に行って舞台の隅にいたの。そうしたら今先生はするべきことをなにも知らないの。お経の本をこう横に置いて、係の僧侶が先生につきっきりで「先生、次はこうです」なんて囁いて教えているのよ。先生は経文のいいかげんなところを開いているもんだから、また係の僧侶が「違います、ここです」なんて教えてるじゃない。

それで、ああ、今先生はなにも知らないんだなぁと思ったの。なのにいつも偉そうにしているのよ。もちろん弟子のわたしもなにも知らないんだけど、あれは面白かったですね。でもね、それで構わないんだなと、そのとき思ったんです(笑)。

シマジ: アッハッハッハ。でも、ハッタリをかますには度胸が必要です。あの明るい豪胆さはどこからくるんでしょうね。

ヒノ: それはそうと、ご高齢の寂聴先生がステーキを美味しそうに食べているのをテレビで観て驚きました。いまでもお肉がお好きなんですね。

寂聴: 大好きなのよ。お釈迦様は肉を食べるなとは仰っていないのよ。肉を食べるために牛を殺したり鶏を殺したりするのは、それはいけないと仰ってますが、そのものをいただくなら、いくら食べてもいいんです。

ありがたいことですが、寂庵には毎日いろんなものが送られてくるでしょう。おもらいものばっかり。お肉も全部もらっているんですよ。ですからね、これはいただいたものだからいいということで、心置きなく食べているんです。

瀬尾: 瀬戸内の食欲には本当に驚かされます。以前、「死ぬ前になにがいちばん食べたいですか?」と訊いたら、「そうねえ、大市のスッポンが食べたいわね」という返事が返ってきて、みんなでビックリしたことがありました。「そんなことを言う尼さんは瀬戸内以外にいないでしょう」と大笑いしました。

寂聴: でもね、わたしは仏教を選んだことを後悔していないし、51歳で出家したこともよかったと思っているんですよ。たとえ今夜死んでも、後悔することはなにもないの。

シマジ: 文化勲章ももらったしね。

寂聴: そう、もらうものはみんなもらった。

シマジ: ちょうどわたしが天台寺で寂聴先生と一緒にいたとき、文化庁から電話がかかってきたんですよね。思わずお祝いの抱擁したことを覚えています。あれからもう10年は経っでいますよね。

瀬尾: 文化勲章は2006年でしたので、12年前ですね。

シマジ: あのころ寂聴先生はしょっちゅう天台寺で「青空説法」をおやりになったいましたね。さすがにいまは行かれないんですか?

寂聴: もうなかなか行けない。でもわたしが天台寺に行かないと誰もこないのよ。

シマジ: あの「青空説法」は凄かったですよね。境内に5000人ぐらいきていましたものね。

寂聴: あの山の上に1万人きたこともあるのよ。

シマジ: 人が猿山みたいに群がっていましたね。

寂聴: もうあと1回か2回は行かなきゃ悪いなぁとは思ってるんですけどね。

シマジ: 最初はあまり人がこなかったそうですね。

寂聴: 最初は宣伝していなかったからね。でもすぐに知れわたって人がいっぱいくるようになりました。ですから町に「観光バスもたくさんくるから、道路や橋を直しなさい」と言って直させたんですよ。いま思うとよく続きましたね。

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