これから急増する「定年女子」を襲う厳しすぎる現実

人口減少日本で、女性に起きること
河合 雅司 プロフィール

オールド・ボーイズ・ネットワークとは?

第一生命経済研究所が定年前後に再就職した60代に調査を実施しているが、男性は「退職前から(再就職先が)決まっていた」が36.8%、「満足のできる再就職先がすぐに見つかった」が30.3%と、70%近くが定年後の人生の選択をスムーズに決めている。

これに対して女性はそれぞれ22.2%、17.8%と、苦戦ぶりをうかがわせる数字が並んでいる。男性以上に、長い老後のライフプランを描き切れない女性が増えることが予想される

男女の差が生じる要因としては企業側の責任も小さくない。男性の場合、「前の勤め先が紹介してくれた」が26.3%なのに対し、女性はわずか4.4%にすぎない。

50代後半の女性の53.0%は勤務先から定年後の仕事に関するアドバイスや情報提供を受けておらず、多くはハローワークや友人・知人、インターネットを使って自ら情報を集めているのである。

 

男性と同様に65歳までの再雇用制度も利用できるが、前出の第一生命経済研究所の調査によれば、男性の6割ほどの水準だ。むしろ、以前から関心のあった資格を取得するためにスクールに通うなど、「第2の人生」を切り開こうという傾向も見られる。

定年女子の再就職を厳しくしている要因の一つに、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の存在がある。

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは、排他的で非公式な人間関係や組織構造のことだ。伝統的に男性中心社会であった企業コミュニティーにおいて、暗黙の内に築き上げられてきた。

社内派閥や飲み仲間、業界の勉強会、経営者の親睦団体など、ネットワークの形態はさまざまだ。多くの男性はこうした人脈を通じて情報交換をしたり、仕事上の便宜を図ったりしている。

女性たちは、ほとんどが蚊帳の外に置かれているため、組織の文化や暗黙のルールも伝わりにくい。

ポストは居酒屋で決められる!?(photo by iStock)

重要な人事異動や新規プロジェクトが、仕事帰りの居酒屋などの会話の中で決まることも少なくない。女性の昇進を妨げている大きな要因として挙げられるが、定年後の好条件のポストについても例外ではないということだ。

そうでなくとも、女性の場合、これまで1つの企業で働き続ける人が少なく、定年後の生活について参考にできる先輩がなかなか見つからない、相談できる仲間がいないという事情があった。

企業には女性が定年退職まで働くことすら、あまり想定してこなかったところさえある。企業経営者は、定年女性の再就職の受け皿づくりを急ぐべきである

わが子に先立たれる女性も増える

とはいえ、企業経営者の奮起を待つだけでは心許ない。人生100年をにらんで自ら準備できることは、若いうちから実践に移しておくに越したことはない。

では、長き老後の生活費を、どうやり繰りすればよいのだろうか。

よほどの資産家は別にして、多くの人の老後の生活資金の主柱といえば公的年金であろう。女性は男性に比べて賃金が抑え込まれたり、途中で寿退社したりする人も多いため、退職金や年金受給額も低い傾向にある。賃金構造基本統計調査(厚労省、2017年)によれば、女性の賃金は男性の73.4%だ。

この男女格差を引きずったまま、高齢期に入る女性は多い。男性よりも老後が長いことを考えれば、少しでも受給額を増やしたいところだ。

公的年金は受給開始後、生きている限り受け取れるし、長い年月の間の物価上昇にも対応している(民間の個人年金や企業年金は必ずしもそうではない)。

まず選択として考えたいのが、「年金の受給開始年齢の繰り下げ」だ。むろん、受給開始年齢の繰り下げは男性にとっても大きな選択肢であるが、寿命の長い女性のほうがそのメリットは大きい。

年金額を少しでも増やしておきたい理由は、寿命の長さが「独り暮らしになる可能性」の大きさと抱き合わせになっていることにもある。

夫のほうが年上という夫婦は多いだろう。男女の平均寿命の差も考え合わせれば、連れ合いを亡くしてから独りで暮らす時間はかなりの長さとなる。

さらに考えなければならないのが、人生100年時代においては、年老いた子供に先立たれる女性が増えてくる点だ。「高齢化した高齢者」となって身内が1人もいないとなれば、頼れるのは年金だけとなろう。