巨岩の下はどうなっているのだろう?(筆者撮影)

落ちそうで落ちない、あの「黄金の巨岩」を見に行くまで

納豆も出てくるミャンマーの旅路
この夏はどこへ行こうか? ヨーロッパも捨てがたいけれど、手軽に行けるアジアがいいな――。「古き良きアジア」を味わうなら、ミャンマーがおすすめだ。最新刊『おとなの青春旅行』で「インドシナ半島ぐるり一周」コースを紹介したライター・室橋裕和氏が、首都・ヤンゴンから「黄金の旅」を始める。

あぁ、パゴダを参拝する女性の美しさよ

はっとして、思わずその店員の顔を見た。

ミネラルウォーターの代金を払おうと、お札を渡したときのことだ。雑貨屋の女性店員は、実に自然な仕草で手のひらを上にして右手を差し出し、そのひじのあたりに左手を添えているのだった。

相手への敬意を示す仕草。お釣りもやはり、左手を添えた右手の上に乗せられて返ってきた。なんと美しいマナーなのだろうと思った。

ミャンマーの最大都市、ヤンゴン。民主化の進展で経済発展が急速に進んでいるという。

確かに活気に満ちていた。ミネラルウォーターを飲みながら街を眺めれば、あちこちでビルの建設が進む。イギリス領時代のコロニアルな歴史的建造物を圧するように、現代的な大型ショッピングモールがそびえていたりもする。

アンバランスに発展していく東南アジアの混沌。日系企業の看板も目にする。車やバスが怒濤のように行き交い、クラクションがこだまし、騒々しいことこの上ないが、街角では思いのほか柔和な笑顔に出迎えられるのだった。

手を上げてタクシーに乗り込んでみる。あらかじめガイドブックで調べておいた料金は頭に入れてあった。途上国でのタクシーは警戒しなくてはならない……が、運転手はいともあっさり相場通りの値段を提示して、車を発進させる。外国人からぼったくる悪習は、あまりないようだった。

ダウンタウンの混雑を抜けて、市内を一望する丘の上にあるヤンゴンのシンボル、シュエダゴン・パゴダにやってくる。創建は2500年も前にさかのぼるという巨大な仏塔のまわりに、寺院や廟、聖者の像、数々の仏像などがひしめくミャンマー最大の聖地。

ヤンゴンの象徴にして観光のハイライト、シュエダゴン・パゴダ

その黄金のまぶしさも印象的だったが、なにより目と心を奪われたのは、参拝に来ているミャンマー女性の美しさだった。

色とりどり鮮やかな民族衣装。腰のラインもあらわな巻きスカートは「ロンジー」というそうだ。色合いを合わせたトップスを着込み、日傘を差して境内を歩いていく。ぴったりとした巻きスカートで歩幅が狭くなるからか、その歩みは楚々としている。

顔には白い文様。頬やおでこに塗っているものは「タナカ」という樹木から採った化粧品であり、日焼け止めであり、そしておしゃれでもある。清涼感もあるのだという。

 

そんな姿で寺院にお参りし、跪拝する女性たち。特別な格好というわけでもない。もちろんミャンマーの誇る聖地であるから、普段よりも着飾ってはいるだろう。しかしミャンマーの人々は日常的に伝統を身にまとって暮らしている。

アジアの国々の生活習慣がどこも西洋化しつつあるいま、民族性を大事にしている数少ない国のひとつだろうと思う。

あでやかな民族衣装が人々の日常に溶け込んでいる


 

10ドルほどのゲストハウスも

7月17日、講談社現代新書から『おとなの青春旅行』が刊行された。シニア世代に向けて、個人旅行の楽しさと、そのノウハウを伝えるものだ。若い層に比べると、シニアはどうしてもツアーを利用して海外に行く人々が増えるのだが、やはり旅は自由に、自分の意思で動き回ってこそ楽しい。

そのために、どんな準備が必要なのだろうか?

不慣れな人でもLCCを手配するにはどうするか、シニアに適した日程の組み方や体調管理、現地での過ごし方、高血圧や糖尿患者へのアドバイスまで、How Toを詰め込んだ。

そして個人旅行におすすめのモデルコースも提案している。フランスでシャンパンのメゾンを訪ね、反戦運動に燃えたベトナムのいまを知り、あのとき夢中になったビートルズの聖地を行く。若い頃に激動を目の当たりにした東西ベルリンやバルト三国を歩く……シニアの琴線にきっと触れる15のコースを紹介しているのだが、そのひとつが「インドシナ半島一周」だ。