リベラル家庭で育った妙齢日本人女子が「ネット右翼」になるまで

誰でもネトウヨになる可能性がある
王谷 晶 プロフィール

日本=私をホメて認めてほしかった

物語を書くこともできなくなっていたけれど、読むのも難しくなっていた。ある程度の長さがある本やテキスト、映画を視聴することができない。途中で気力がなくなってしまうのだ。なので自然と数百文字でオチがつく2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のネタスレや、そのまとめサイトに入り浸るようになった。そこで出会ったのが、「外国人の反応」を集めたまとめサイトだった。

そこには外国人が日本の文化や人に感動したり驚いたりする「ちょっといい話」なネタがまとめられていて、似たようなサイトは他にもいくつかあった。内容はどこも同じで、外国人(登場するのは西欧人が多かった)が日本のアニメ・ゲームはすごいとか、食べ物が美味いとか、人が親切とか、治安がいいとか言ってたよ、というエピソードが大量にまとめられている。それを毎日毎日読みふけっていた。

photo by iStock

なぜ「日本すごーいとホメそやす外国人のエピソードまとめ」に惹かれたのか。当時の私は、完全に自分に対する自信を失っていたように思う。

体重が数年で30キロ以上増え、唯一の得意分野だと思っていた文章書きもできなくなり、身体は消えない傷跡だらけ、酒が手放せず薬と一緒に焼酎をガブ飲みしては親を泣かせていた。治療は受けていたけれど「死んでもいいや」とずっと思っていた。自分は猫のフン以下の存在だと本気で思っていた。

でも、外国人の反応まとめサイトを読んでいるときは、なぜか気持ちが癒やされた。

学歴も職もなく人生からコースアウトしてしまったと思っていたけれど、それでも「日本人」という属性だけは剥がれ落ちていない。だからそこを褒められると自尊心がくすぐられて、嬉しかったのだと思う。

 

実際にあった話というていで書かれているエピソードが本当かどうかもどうでもよかった。ホメて認めてほしかった。日本=私を。一つのまとめサイトを読み尽くすとリンクを辿って次のサイトへ。それを繰り返していくうちに、私はいつの間にか主に中国や韓国の話題やニュースをまとめたサイトに辿り着いていた。

2ちゃんねるのスレッドを抜粋しまとめたそのサイトでは、中国の環境の悪さや韓国企業が日本の技術やデザインをパクッたという話題がいくつもいくつも並び、そこに大量の罵詈雑言が「意見」として寄せられていた。

そのニュースのソースも信憑性もそもそも分からない。けれど「外国人の反応まとめ」で「日本ってスゴイ!」の地慣らしがされていた私はそこに書かれていたことをまるっと信じてしまった。

日本は間違ってない。中韓はひどい国だ。日本は世界に尊敬されている。私は栄えある日本人。疑いもしなかった。自分でも書き込みを始め、日本を悪く言っているというメディアや個人があれば「叩き」に参加した。