はあちゅう事実婚発表で見えた、日本人が囚われる「戸籍の呪い」

#一般人の方が時々誤解しておられる
水谷 さるころ プロフィール

「結婚観」が昭和から変わっていない

私が事実婚を選択している理由の一つは「保守的な結婚観を押し付けられたくない」からです。なぜならこの社会の結婚観が昭和のままから刷新されておらず、「戸主に従属する家族」という家制度のイメージに囚われていることが多いからなのです。

その考え方の場合、女性は結婚すると「夫に養われている」と思われてしまいます。これによって仕事で「結婚したからいいでしょ」と原稿料の値引き交渉をされた……という話は以前書きましたが、同時に「夫の稼ぎ」でランク付けされたり、独身のころは「個人」として見られていたのに「妻」「奥さん」としての立場や振る舞いを強いられたり……ということも実際体験しました。

私には向いていなかったし、実際の夫婦関係も元夫に従属するような関係では無かったためにとても困惑しました。

実際に「家督」を継ぐような伝統的な歴史のある家に生まれていたり、「良家の子女が旧家にお嫁入り」などという価値観を持っていたりする人達もいるでしょうし、それぞれが大事にしたいものを大事にするのはとてもよいことでしょう。しかし経済的にも自立し、自分の選択ができる個人がそのような考え方を押し付けられたり、影響されたりする必要はないと思います。

私自身は「何も親から継ぐようなものを持っていないのに、なぜそのような価値観だったのか…?」と離婚してから思いました。自分がどう生きたいかを考えずにただ「親が思う正しい結婚をしなくてはならない」と思い込んでいただけだったと思います。

私は事実婚を選んでから、「ストレスの少ない」結婚生活を送れていると思っています。結婚生活において周囲から誤解が少なく、自分達には「事実婚」の条件やイメージが向いていたのだなと実感しました。

 

法律婚=責任を取ったことになるのか

ところがたまに事実婚について「責任を取っていない」とか「不正をするためにしているのでは」というような穿った見方をする人もいるようです。でもそれは裏を返せば「法律婚さえすれば婚姻の実体がどうであれ責任を取ったことになる」という考えではないでしょうか。

戸籍さえ一緒にすれば「責任を取った」ことになるなんて、ずいぶん簡単です。「結婚」とは「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。(民法第752条)」とあります。事実婚も法律婚もこの考えが基本です。

実体として夫婦関係があれば、法律婚をしていなくても民法では「夫婦」として扱われます。そして住民票を同一世帯にすると自治体からは「夫婦」として扱われるため「不正(保育園の入園条件の詐称や、母子家庭手当の不正受給など)」はできない仕組みになっています。

事実婚でも法律婚でも、システムを悪用しようとするとか、無責任な人はいるでしょう。ただし、事実婚のほうが「実体」が無ければ結婚していると言えないため「互いに協力し扶助」することに意識的になると思っています。少なくとも私たち夫婦はそうです。

民法が改正されて71年。女性は男性の稼ぎのみに頼らず自活することもできるようになっています。結婚、離婚も個人が選択できる時代です。古い結婚観は刷新し、現在の法律やライフスタイルに基づいた結婚観を構築していいはずです。

はあちゅうさんも「自分らしい選択」として事実婚を選択したのだと思います。自分達に合ったライフプランを自由に選択し、自分達らしい人生を築き上げていって欲しいと思っています。

©水谷さるころ
みずたに・さるころ 1976年うまれ。99年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。旅番組での30日間世界一周紀やアラサーでの結婚・離婚などのエッセイマンガで人気を博す。最新作『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』では、「ツーオペ育児をするには夫婦がどうしたらいいのか」という視点のリアルな体験記が描かれている。