はあちゅう事実婚発表で見えた、日本人が囚われる「戸籍の呪い」

#一般人の方が時々誤解しておられる
水谷 さるころ プロフィール
©水谷さるころ

70年前の「お嬢さんを下さい」の概念

そもそも、この「戸籍が汚れる」という考えは、実際の電算化される前の手書きの戸籍が「汚れる」以外に、根強い「家制度の概念の残り」に基づく理由の方が大きいのではないでしょうか。

「家制度」は明治31年に制定され、一家の主である「戸主」がその他の家族について強い権限を持っていた制度です。今でも男性が結婚したい女性の父親に向かって「お嬢さんを下さい」と言ってしまうのは「戸主」が結婚を認めなければ婚姻できなかった頃の名残ですが、昭和22年に民法が改正され、「家制度」は廃止されています。

今は日本国憲法第24条に「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と定められています。つまり、結婚したい本人の同意によってのみ、結婚は成立するのであって、実際にお互いの親や親戚に「挨拶に行く」のは礼儀として素晴らしいことですが、法律的には関係ないのです。

ところが、まだまだ「一家の主=父親(夫)」「女性(妻)は主の所有物」的な旧態依然の考え方が実際には残っています。それゆえに「結婚」をすると男性側は妻を「所有物」のように扱ったり、逆に「離婚」を独立した個人の選択とは考えず「所有物の喪失」と考えたり女性側は「嫁としての価値の喪失」と見てしまい「戸籍が汚れる」などという考えになるのだと思います。

 

離婚したって親の戸籍に影響はない

子どもが「離婚」をするときに親が「我が家の戸籍が汚れるから」と反対する……というケースをネットの法律相談で見たことがあります。しかし、すでに結婚した子どもは別の戸籍であり、親の戸籍と関係ありません。子が結婚したときに「戸籍筆頭者」になれば、離婚後に親の戸籍に戻ることはできません。

戸籍筆頭者でなく、その籍から抜ける場合(妻のケースが多いですが)は親の戸籍に戻ることもできますが、新しい戸籍を作ることもできます(旧姓に戻る場合でも、新姓を使い続ける場合でもどちらの名前でも可能です)。

よくある間違いとしては「妻の姓に変えたらそれは婿養子」というものがありますが、現在は姓は夫婦どちらでも選択できますし、妻の両親と夫が養子縁組しない限り「婿養子」にはなりません。旧民法の制度としての婿養子縁組はすでに廃止されています(戸主は原則男性だったため、妻の親との養子縁組が必要だった)。

民法が改正されて70年以上も経つというのに「結婚とは嫁入りであり、女性が男性側の家(戸籍)に入るもの」というイメージのままの人がたくさんいるのです。