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米中貿易戦争時代に「日中急接近」が意味するもの

いいのか、悪いのか…

米中貿易戦争時代の幕開け

近年、米中間の対立が先鋭化している。

米中は、オバマ政権の8年間を通じて経済的相互依存を維持しつつ安全保障面で対立の度合いを深め、南シナ海では軍事的に対峙するにいたった。

現在のトランプ政権では、そうした安全保障面での摩擦に加えて、経済面での摩擦も強まり、ついに米中が相互に経済制裁をおこなう貿易戦争が始まった。

日本の同盟国が安全保障面でも経済面でも中国に対する姿勢を大幅に硬化させているなかで、日本はどのような対中姿勢を採ろうとしているのか。

ここ数ヵ月の動向を見る限り、日本政府は、米国とは対照的に中国と友好ムードを盛り上げる方向に舵を切ったように見受けられる。

日中関係は、2010年、12年の尖閣をめぐる対立をきっかけとして、ながらく米中関係よりも不安定な状況に陥っていた。

したがって、「そろそろ関係改善に向けた動きが本格化しても良い頃だ」とお考えになる読者も少なくないと思われる。

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しかし、このタイミングでの対中接近には、一抹の不安を覚える。

なぜか。それは、近年日中の対立を深刻化・慢性化させ、米中間の摩擦を恒常化させるにいたった問題群の多くが未解決のまま残されているからだ。

様々な問題のうち、最も重要かつ根本的な問題は、計画経済から市場経済への移行を進めてきた中国共産党の統治の在り方そのものに見いだすことができる。

 

中国の統治体制の構造的問題

中国では、一党支配を続ける中国共産党が主要な産業、不動産、資源、インフラを支配したままの形で市場経済の原理を導入したため(社会主義市場経済)、経済発展とともに共産党の高級幹部とその一族や取り巻きからなる特権集団が優先的に富裕化し、貧富の格差が拡大した。

そこで共産党員の特権を解消するべきだという要求(民主化運動)が1980年代に盛り上がったわけだが、これは共産党の武力によって鎮圧された。

では、共産党は、その後、貧富の格差から生じる不満をどのようにコントロールしてきたのかといえば、その方策の一つとして中国の民衆に対して中国の経済発展は半永久的に続き、特権集団に含まれない一般民衆もやがて豊かな生活を享受できるようになるという未来予想図を示すようになった。

つまり、貧富の格差は、時間の経過とともに解消されると宣伝したのである。