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日本政府に見捨てられた「公安スパイ」の悲惨すぎる肉声

中国で実刑判決を受けると、どうなるか

「懲役5年」「懲役12年」—。中国でスパイ罪に問われた日本人に、続々と判決が言い渡されている。日本の政府機関に雇われた協力者=スパイだ。隠蔽される「スパイごっこ」の実態を、本日発売の週刊現代でフリージャーナリストの桜坂拳太朗氏が明らかにしている。

妻の極秘面会

2ヵ月に一度、ふたりの男は横浜から神奈川県某所に向かう。彼らにとって憂鬱な日だ。 

用意した部屋に女性がやってくる。沈痛な面持ちの女性を前に、50代の男がメモを見ながら話す。

「旦那さまは特別注文で、食べたいものを食べているそうです。肉や魚、野菜をバランスよく食べて、食事については不自由ないそうです。ビタミン剤も飲んでいます。インスタントコーヒーも飲めるし、バターやジャムも買っているようですよ」

 

ふたりの男は関東公安調査局・横浜公安調査事務所の調査官。相対する女性は2015年5月、中国に拘束されたM氏(57歳)の妻だ。

調査官たちは、在瀋陽日本総領事館が2ヵ月に一度行う「M氏との領事面会」の内容を伝えているのだ。調査官は妻を安心させるため、獄中のM氏の快適な生活を強調するのだが、妻は納得しない。

「体調はどうですか?」「精神状態は?」

調査官は、外務省から聞いた真実を妻に話さざるを得なくなった。

「……疲労は溜まっていて、耳鳴りを訴えています。睡眠薬を飲んでいるそうです」

両者の間に沈黙が訪れる。公安調査庁の幹部はこう明かす。

「M氏は横浜(公安調査事務所)が運用していた協力者だから、彼らが家族のケアを担当している。だが我々の対応に、奥さんも息子さんも不満を持っており、連絡担当者も次々と変わっています」

M氏は公安調査庁に雇われた協力者=スパイだった。妻はこう叫ぶ。

「夫は日本のため、拉致被害者を救うために働いていたのです。なぜ助けられないのですか」

M氏は今月13日、遼寧省の丹東市中級人民法院で懲役5年の実刑判決を受けた。同じく、浙江省温州市でスパイ容疑で拘束された愛知県のI氏(54歳)も今月10日、懲役12年の実刑判決を受けている。

この2人以外に、中国では、6人の日本人がスパイ罪や国家機密等窃盗罪で拘束されている。

「これは氷山の一角です。'13年以降、日本から中国に入国した20人以上が中国当局に身柄を拘束されています。その大半は公安調査庁のエージェント(協力者)です」(日本政府関係者)

拘束されたのは、日本人だけでなく、日本に帰化した元中国人、在日中国人もいる。その多くが、公安調査庁に協力を依頼されて、情報収集をしていた協力者だというのだ。