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『種の起源』から約160年……まだ「種」が定義できないってマジ?

分けるかまとめるか、それが問題だ

地球上には、未知の生物がまだまだ残されているらしい。その証拠に、「新種の○○が発見された!」(○○には生物のグループ名が入る)というニュースをときどき目にする(ネッシーや雪男も、諦めるのはまだ早い?)。

生物の多様性には驚かされるばかりだが、それにしても、生物学者たちは発見した生き物をどうやって「新種」と判定するのだろうか? そもそも、生物の「種」とはなんだろう? 

熱帯林の多様な生態を観察しつづけてきた生物学者、山田俊弘氏(『絵でわかる進化のしくみ――種の誕生と消滅』の著者)に「種にまつわる問題」を解説していただいた。

今日もどこかで新種が見つかる

スウェーデンの博物学者リンネが独自の方法で生物の種の記載を始めたのは、18世紀中ごろのことでした。それ以来、私たちは種の記載の努力を続け、この250年あまりの間に120万を超える種を発見してきました。

一方で、ときどき報道される新種発見のニュースは、私たちがまだ、地球にいる生物の種を発見し尽くせていないことを示しています。それでは、私たちは生物種をあらかた発見し終わっているのでしょうか、はたまたゴールはまだまだ遠いのでしょうか。

じつは今でも、年に6000種を上回るペースで新種が発見されています。つまり、今日もどこかで新種が見つかっているのです。その多くは、深海や洞窟、熱帯雨林といった、地球にまだわずかに残されている未探検の地域での調査によって発見されています(写真1、写真2)。初めて調査される場所で新種が発見されるのは、わかりやすいパターンです。

【写真】ヨコエビ、Pseudocrangonyx akatsukai
  写真1 秋芳洞や岡山,熊本の洞窟で見つかったヨコエビ、Pseudocrangonyx akatsukaiは新種(未記載種)だった。広島大学・富川光博士提供
【写真】フンコロガシ Microcopris hosakaiMicrocopris hosakai
【写真】新種フンコロガシ Ochicanthon niinoiOchicanthon niinoi
【写真】新種フンコロガシOchicanthon_okudaiOchicanthon okudai
  写真2 著者も調査に参加したマレーシアの熱帯雨林には、たくさんのアジアゾウが生息していた。アジアゾウの糞から数匹の食糞性コガネ(フンコロガシ)を採取したのだが、その中にはなんと3種もの新種(上から、Microcopris hosakaiOchicanthon niinoiOchicanthon okudai)が含まれていた。写真中のスケールは5mm。近雅博博士、広島大学・保坂哲朗博士協力。九州大学・柿添翔太郎氏撮影

一方、以前からいたことはよく知られていたけれども、それがじつは新種(未記載)だった、という発見パターンもあります。キリンの新種発見の例を紹介しましょう。

首が長いことでおなじみのキリンは、サハラ砂漠の南側だけに生息する動物です。かつて、キリンはいくつかの亜種からなる1種とされていましたが、2016年にキタキリン、アミメキリン、マサイキリン、ミナミキリンの4種に細分されました。キリンの新種が見つかったのです。この細分の根拠については、のちほど解説します。

現在、新種として記載される約半分が、こうした再分類により生まれています。