地球上には、未知の生物がまだまだ残されているらしい。その証拠に、「新種の○○が発見された!」(○○には生物のグループ名が入る)というニュースをときどき目にする(ネッシーや雪男も、諦めるのはまだ早い?)。
生物の多様性には驚かされるばかりだが、それにしても、生物学者たちは発見した生き物をどうやって「新種」と判定するのだろうか? そもそも、生物の「種」とはなんだろう?
熱帯林の多様な生態を観察しつづけてきた生物学者、山田俊弘氏(『絵でわかる進化のしくみ――種の誕生と消滅』の著者)に「種にまつわる問題」を解説していただいた。
スウェーデンの博物学者リンネが独自の方法で生物の種の記載を始めたのは、18世紀中ごろのことでした。それ以来、私たちは種の記載の努力を続け、この250年あまりの間に120万を超える種を発見してきました。
一方で、ときどき報道される新種発見のニュースは、私たちがまだ、地球にいる生物の種を発見し尽くせていないことを示しています。それでは、私たちは生物種をあらかた発見し終わっているのでしょうか、はたまたゴールはまだまだ遠いのでしょうか。
じつは今でも、年に6000種を上回るペースで新種が発見されています。つまり、今日もどこかで新種が見つかっているのです。その多くは、深海や洞窟、熱帯雨林といった、地球にまだわずかに残されている未探検の地域での調査によって発見されています(写真1、写真2)。初めて調査される場所で新種が発見されるのは、わかりやすいパターンです。
一方、以前からいたことはよく知られていたけれども、それがじつは新種(未記載)だった、という発見パターンもあります。キリンの新種発見の例を紹介しましょう。
首が長いことでおなじみのキリンは、サハラ砂漠の南側だけに生息する動物です。かつて、キリンはいくつかの亜種からなる1種とされていましたが、2016年にキタキリン、アミメキリン、マサイキリン、ミナミキリンの4種に細分されました。キリンの新種が見つかったのです。この細分の根拠については、のちほど解説します。
現在、新種として記載される約半分が、こうした再分類により生まれています。