「宇宙の果て」までの距離は138億光年ではなかった?

最新宇宙論の驚くべき成果
戸谷 友則 プロフィール

少し失望されただろうか。

しかし考えてみてほしい。「宇宙がビッグバンで始まったことを科学として自信を持って言える」ということだけでも、偉大すぎるほどの科学的成果というべきではないだろうか。それ以前は、そのようなことは科学の対象ですらなく、神話や伝承の領域であったのだから。

464億光年の彼方にある「宇宙の果て」

それでは空間方向の「果て」はどうだろうか。現在の宇宙論においてこの意味で「果て」という場合、さらに2通りの意味で使われていることを最初に述べておきたい。

宇宙は138億年前に始まり、宇宙には光より速く伝わるものは存在しない。従って、我々が原理的に観測できる領域の大きさには限りがある。それは現在、我々を中心として約464億光年の半径を持つ球ということになる。

この464億光年という限界距離を「観測可能な宇宙の果て」と呼ぶことにする。

あれ? 138億年前に始まったのだから、光の速度で到達するのに138億年かかる距離、つまり138億光年ではないのか? と思われたかもしれない。

だが、光が昔に通過した領域はその後の宇宙の膨張により引き伸ばされているので、光が通ってきた経路の長さを今の宇宙で測れば、約464億光年になるということなのだ。

遠方から届く光はそれだけ昔に放たれたものであり、よく言われるように宇宙では「遠くを見ることは過去を見ること」になる。宇宙では「空間方向の宇宙の果て」に迫る旅は、「過去にさかのぼる宇宙の果て」に迫る旅でもあるのだ。

天文台観測者は「過去」を見ている Photo by European Southern Observatory / Flickr

ここに、歴史学や考古学、あるいは地球史といった過去の歴史を扱う他の学問分野にはない、天文学ならではの魅力がある。より性能のいい望遠鏡を作り、より遠くを観測していけば、銀河や宇宙がどのように進化してきたかをタイムマシンのようにさかのぼって直接見ることができるわけである。

実際、最新鋭の地上巨大望遠鏡や宇宙望遠鏡によって、宇宙が誕生してからまだ5億年(現在からさかのぼること133億年)、宇宙の大きさが現在の10分の1だった頃の銀河が観測されている。

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