できる人は無意識に「説明力」を使っている!

相手を引き込むために必要な、表現のポイント
海保 博之 プロフィール

わかりやすい表現のためのリテラシーを意識する

以下、実習をやりながら、わかりやすいとは何か、意識してみてほしい。

表現はわかりやすいことが、まず大切である。そのためのリテラシー(きまり事)の基本は、説明したいことの精選である。言いたいことが10あっても、それを3つくらいに圧縮したり、とりあえず大事ではない7つを切り捨てたりすることができないと、わかりやすい説明にはならない。

その上で、結論や言いたいことの概要を先に示すようにして、相手がこちらの話の受け皿を作れるように支援してやる。

いつまでも結論を言わないのは、相手をいらいらさせる(もっとも、あえて受け手をそうさせる導入テクニックもあることはある)。さらに、結論や概要がないと、今の話が全体のどこかがわからない不安を与えることになる。

【実習1】次の絵を電話で相手に描いてもらう

【図】電話で絵をかいてもらう説明
  図1 説明する絵
[解説1]

「説明の詳しさ×わかりやすさ=一定」の法則を理解する

授業やセミナーで、時折【実習1】のようなことをやってもらう。

「大相撲の土俵入りの線画を描いてください」で終わる人もいる。説明力のある人と言ってよいかもしれない。

しかし、多くの人は、四苦八苦して、なんとか腕や足の曲がり具合などまで正確に描いてもうらおうとする。

理工系志向の方、あるいはきっちり真面目な方(?)は、後者のほうが多いと思う。しかし、詳し過ぎる説明はかえって相手を混乱させてしまうこともある

【実習2】次の指示に従った絵を描いてみる

  • 指示a「四角形の上に台形を描いてください」
  • 指示b「大文字のTを逆にしたものを描きます。その上に三角形を描いてください」

[解説2]

「先に目標を言うこと」の重要

aもbも、それなりに描ける。でも人によって、ばらばらになる。

みんなに、aなら家の絵、bならグラスの絵を描いてもらいたいなら、先に、そういえばよい。誤解や混乱を招かないですむ。

目標先行表現は、解釈の幅を狭めて、こちらの言い分を誤解なく受け取ってもらえる

そして、説明内容は、メリハリをつけて表現する。メリハリとは、意味のまとまり(チャンク)と内容の軽重を「見える化」することである。

・1つは……、2つは……、
・大事なことは、……

といった類の言い回しに加えて、パネルに要点を書く、図解して見せるなどの工夫をする。

【実習3】次のカタカナ文を、漢字かな交じり文に直す

  • a. カネヲクレタノム
  • b. ウリウリガ、ウリウリニキテ、ウリウリノコシ、ウリウリカエル、ウリウリノコエ

[解説3]

「漢字かな交じり文は、意味のまとまり(チャンク)の見える化に貢献している」ことを理解する

日本語表記では、漢字かな交じり文は、画数の多い漢字と表示要素も違うかなとの弁別効果によって、意味のまとまりが見えやすくなっている。読点にも同様の働きがある。

a「金をくれた。飲む。」「金をくれ。頼む。」
b 瓜売りが、瓜売りにきて、瓜売り残し、瓜売り帰る、瓜売りの声

最後にもう一度、結論を手短に言う。

こんなことを実践的に学ぶには、ニュース番組や情報番組のプレゼンや仕掛けが参考になる。

アンカーがまず問題を提起する

サポートアナが事実関係を見事に整理してパネルで解説する。ここまでが表現力、説明力が深くかかわる

そして、番組の見解をゲスト・コメンテーターに語らせ、視聴者を一定方向に誘導する。これが説得力になる

裏では膨大かつ有能なプロの支えがあってのものだと思う。だからこそ、そこから学ぶのである。

【写真】ニュース番組の仕掛けが参考になる
  ニュース番組の仕掛けが参考になる photo by iStock