医学部予備校の元経営者が明かす「裏口入学のヤバイ実態」

そうか、そんな世界だったのか…

世間を驚かせた、東京医大の裏口入学問題。医学部予備校の経営者だった原田広幸氏が、いまだに医学部で裏口入学が行われているその実態について告発する。

実際にいた、ヤバい医大生

「先生、“モル”ってなんですか?」

これは、今から数年前、ある大学(A大学とする)の医学部の講義中に、学生から出た質問だ。“モル”とは“物質量”のことで、高校で履修する「化学」の基本概念である。医学部生は、推薦入学者も含めて、全員が「化学」を人並み以上に勉強しているはずで、“モル”を知らないはずはない。ジョークで言ったのか、本気で言ったのか、どちらにしても、悪い冗談にしか聞こえない。

その後A大学では、「あの学生は、学内実力者B教授の子息だというじゃないか、やっぱりあの子は間違いなくコネ入学だ」という噂が自然と広まっていったという――。

東京医科大学で発覚した、「不正入学」問題。文部科学省のエリート官僚が、私立大学支援事業の選定の見返りとして、子息を医学部に合格させてもらっていたという。「『白い巨塔』の昭和時代でもあるまいし、官僚の口利きなんて、未だにまかり通っているのか!?」「そんなバカな」と訝しがった人も多いのではないだろうか。

今回の裏口入学は、非常に稀な、極めて特殊な事件に過ぎないのだろうか。それとも、数多ある不正入学の「氷山の一角」なのだろうか。

 

「裏口入学はある」3つの理由

医学部の裏口入学は、いまだに存在するのか。

私の肌感覚から述べると、存在すると言わざるを得ない。いや、正確を期して、また医師・医療従事者の名誉のため、「数は多くないが未だに存在する可能性がある」としておこう。

たしかに、今回の事件はやや特殊なケースではある。というのは、今回の不正入学は、大学が便宜を依頼する立場で、合格者の親が便宜を図る立場になっており、何かの見返りとして子息を入学させてもらうという点では、ふつうの裏口入学と同類であるが、行政がからんでいるスケールの大きな事件だからだ。

しかし、不正な入試が行なわれたという事実には変わりなく、合格者の親などが合格の見返りに多額の寄付金を前払いする形での裏口入学は、未だいくつかの大学で行なわれている、というのが関係者の共通認識である。

さて、私が「裏口入学は未だに存在する」と判断する理由は、3つある。

1つには、医学部合格を請け負うブローカーのような人たちが、実際に存在するという事実だ。

医学部入試、とくに私立医学部入試に関係する予備校や指導者の間では、入試の前に、実際に口利きの依頼を受けたり、そういったことがされているという話を聞いたりするのは、よくある。

予備校での保護者との面談で、「先生のところでは、(口利きが可能なブローカーや内部関係者を)ご紹介いただけないのでしょうか?」と、露骨に相談してくる親もいる。私自身、そのような人(ブローカーを自称する人)に会ったこともある。ただし、こういう例は頻繁にはない。

いや、あまり多くはないが、冒頭に挙げた医学部の講義中に「先生、モル(mol)ってなんですか?」と質問する学生など、明らかに学力不足で入学してきた「毛並みの良い」入学生の存在は、「うわさ」の信ぴょう性を裏書きしているようにも見える。

2つ目の理由は、ゴボウ抜き合格者の存在である。

ゴボウ抜き合格者とは、たとえば模試などでの成績、得点が不良であったにもかかわらず、なぜか医学部入試の学科試験(それも、ある特定の大学の入試)で、多くの成績優秀者をゴボウ抜きにして合格してしまう受験生のことだ。

こういった受験生は、たまたまその大学の試験だけ合格点を取れたという可能性はないのか、と反論する人もあろう。しかし、現在の医学部入試の競争率は異常なほど高く、入試難易度(偏差値)も非常に高い。河合塾の実施する模擬試験での偏差値ランキングをみると、62.5より下位にある医学部(医学科)は1校も存在しない。

このような現状で、成績不良の受験生が、偶然にも、ある医学部だけで合格点を取るという可能性は、ほとんどゼロに近いだろう。