米中貿易戦争「トランプの決断」が、中国経済の息の根止める可能性

とはいえ、日本も喜んではいられない
河東 哲夫 プロフィール

うさん臭い中国の「技術力」

さらに、中国の技術開発の実力には胡散臭いものがある。中国ではインターネットを使った電子商取引や、シェア自転車などの新しいビジネス・モデルの伸長は著しい。しかしそれはモノ、つまり製造業の産物を右から左に動かして口銭を取るモデルに過ぎない。

肝心の先端技術製造業では、小米、華為等一握りの企業を除いては、自力で世界の先頭に立っていける企業は少ないように見える。

先端技術製造業での実力をつける上では、中国人の多くに見られるいくつかの「癖」が足かせとなろう。

 

1つは既に指摘した、「見てくれ」だけに目を奪われて、ものごとの本質を見逃す癖だ。たとえば、先端技術製品の工場を作って「カネで」外国人技術者を招聘するのはいいのだが、目先の生産技術向上にだけ目を向け、研究開発面での人材獲得を怠るので、次世代の技術の開発・生産に結び付かない。

もう1つは王朝時代からの弊だが、「政府」が経済で果たす役割が大きすぎ、経済の効率を下げている。と言うか、経済を政治、さもなければ投機行為に変えてしまう例が多すぎる。

中国では電気自動車(EV)が今フィーバーで、車載用電池を初め、中国企業の台頭が著しいように報じられる。

その一部は事実だろうが、EV・電池の技術はまだ未熟で、本格的投資は時期尚早なのだ。それなのにフィーバーが生じているのは、中国政府が生産、購入の両面にわたって手厚い補助金・助成金をばらまいているからだろう。

補助金をもらうためにだけ、何かをしたかっこうをしてみせる者も多いのが中国社会。

商標を海外で登録するのに補助金が出るので、このところ中国企業による出願数はうなぎのぼりだ。「ブランドを育成する」ための補助金狙いなのである。

そして今中国は、若者によるスタート・アップ起業が日本など及びもつかないフィーバーぶりだが、その背景には2015年以来、地方政府などによる起業支援が打ち出されたことがある。これらは、実効性のある事業と言うより、投機に近いものである。

そして政府予算に依存した巨大プロジェクトのオンパレード。

専制社会の建造物は、どこでも不必要に大きく、人を威圧するが、ソ連では工場もそうだった。「2つ、3つの工場で国全体の需要を賄う」のが効率的なのだと思い込み、建物が1キロメートル四方もあるようなお化け工場をいくつも建てたのである。

中国にも、ソ連の計画経済の悪弊がいくつも残っている。今、5000億円、あるいは1兆円もかけて有機EL製造工場等建設といった発表が相次いでいるのもそうだろう。

「中国製造2025」という先端技術重視の習近平路線に則って工場建設案件を打ち出せば、まずそれを提案した官僚――国営企業だから「官僚」なのである――の評価が上がる。予算も銀行融資も獲得しやすい、その一部は地方政府が別の目的で使えるようキックバックする、そしてあわよくば、いくばくかを米国に送金、将来自分で使えるようにしておけるかも――こういった計算が現場では渦巻いているに違いない。

中国の経済の多くの部分は「経済」であるよりも「政治」、そして投機行動なのだ。

以上、悪い面ばかりに注目したが、トランプのせいで中国経済が輸出主導モデル再構築を迫られていることは間違いあるまい。

そのマグニチュードは、1985年のプラザ合意で輸出主導から内需主導の成長モデルへの転換を強いられた――今でも転換できていないが――日本が受けた衝撃以上に大きなものになるだろう。

中国には、国民の不満のガス抜きをする、選挙という便法がないことも、社会に圧力を溜めこみやすい。

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