米中貿易戦争激化で、ついに習近平に「激烈批判」が続出

「政変」は起きるのか
津上 俊哉 プロフィール

すでにトランプ問題ではない

中国に「やがて取って代わってやる」と宣言され、自らの信奉する政治制度を「中国より劣っている」と見下されたせいで、「負けず嫌い」な米国の闘志のスイッチが入った。

(そこにもう1つ、「AI(人工知能)やビッグデータなどを巡るハイテク競争で中国に負けるかもしれない」という危機意識も加わるのだが、ここでは詳論しない)。

いまや米中関係の悪化は「トランプ問題」の域をとうに超えている。

「中国は『国家資本主義』や『産業政策』を手段として、米国の覇権と米国がこれまで維持してきた世界秩序を引っ繰り返そうとする『戦略的競争相手』であり、中国の行いをこれ以上容認する訳にはいかない……」

こういう認識がトランプ政権だけでなく、いまや米国政策エリートたちの間で超党派的コンセンサスになったからだ。米中貿易戦争でも、中国の産業政策や知財権問題を巡るトランプ政権の強硬姿勢には、トランプを嫌う陣営からも強い支持があるのだ。

 

この半年あまり、米国を訪問して意見交換する機会を持った中国の識者たちは、米側の対中観が短期的には元に戻せないほど悪化してしまったことを思い知らされて帰っていった。

西側、とくに米国の制度を軽侮するような感覚は、中国でこの2、3年、広く共有されていた「時代の気分」だった。

習近平は、中国の力の限界を知るからこそ米国との対立回避に腐心したのだと思うが、この1、2年、党大会など内政面で「軽侮」の方向に重心を移しすぎた。党内でもそのバランス失調を批判する声があるのだと思う。

そう見れば、王滬寧が批判の矢面に立たされている話も腑に落ちる。

西側の政治体制や価値観に対する忌避感・軽蔑感は習近平本人のものだが、その漠とした感覚を「理論」に仕立て直して、通りの良いキャッチコピーを発案したのが王だからだ。

平たく言えば「おまえが美辞麗句で煽って、習近平をいい気にさせ過ぎた」と見られているのだろう。