米中貿易戦争激化で、ついに習近平に「激烈批判」が続出

「政変」は起きるのか
津上 俊哉 プロフィール

対米関係の急悪化は習近平の責任か

北京の政治ムードが急変した原因はずばり、米中貿易戦争勃発に代表される米中関係の悪化だ。

「長老が連名の意見書」、「王滬寧解任」と論ずる香港情報も「習近平が無用な挑発をしたせいで対米関係が悪化して貿易戦争を呼び込んでしまったからだ」と論じている。

しかし、そう聞いたら習近平はさぞかし不服だろう。習の対米政策は、米国との対立を避けることに尽きると言っても過言ではなかったからだ。

とくに当選早々「1つの中国」原則に難癖を付けたりするトランプを見てから、やり取りには最大限の注意を払ってきたし、北朝鮮問題でも最大限の協力をしてきた。

後述するように、中国は昨年から景気が悪くなることを覚悟して、引き締め色の強い経済政策を採ってきた。

そのさなかにトランプが選挙戦中に吹聴していたような貿易戦争を仕掛けられては困るから、今春以来話し合いによる解決を目指してそれなりに努力もしてきたのだ。

 

そうは言っても、習近平に一切責任がないとは言えない。傍から米中関係を眺めていて、習近平にも責任があると感じることが2つある。

第1は、昨年の第19回中国共産党大会で、「30年後には米国に取って代わって世界一の国になる」と宣言したことだ(米国人はそう受け止めた)。

そこで言及された「中華民族の偉大な復興」は20年来用いられてきた言葉だが、習近平は、この抽象的な目標を「2035年から2050年までに『社会主義現代化強国』を建設する」ことだと定義し直した。

そこには経済規模はもとより、軍事力でもソフトパワーでも米国を凌駕する、つまり世界一になるニュアンスが込められていた。

第2は、習近平が米国の(厳密には「西側」の)政治制度や価値観を見下したことだ(米国人はそう受け止めた)。

中国は以前から「西側流の政治制度は受け入れない」としてきたが、それは「中国には中国の国情があるから」だった。

ところが、最近はさらに1歩進めて、「中国の社会主義モデルで世界の途上国や民族に全く新しいモデルを提供する、人類問題の解決に貢献できる中国ソリューションを提供する」と言い出した(第19回党大会)

筆者の見るところ、このステップアップのきっかけになったのは、トランプ大統領の誕生やブレグジット(英国のEU脱退)だ。

習近平はこれらの選択を西側政治制度が起こした「エラー」とみて、そんな重大エラーを起こす西側の政治制度よりも、中国の(賢人による開発独裁型)制度の方が優れている」と断じた(多くの米国人がそう受け止めた)。