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過激で非常識なほど票が集まる...トランプの「経済学と集票」の謎

結局は経済より選挙

はっきり言って無理筋

国際経済においては現在2つの大きな課題がある。現在、FRBや先進国が行っている「金融引締め」と、ドナルド・トランプ米国大統領の「過激な経済政策」である。これは「政治リスク」とまでいわれている。

金融引締めについては、すでにこのサイトで解説しているので、今回はトランプの「過激な経済政策」について、それがなぜ成り立つのかについて解明したい。

最近の世界経済の成長率低下、そして株価の下落をもたらしているのは、トランプがもたらしている「貿易戦争」といっても言い過ぎではない。我々が生きている経済、そして教えている経済は「自由主義経済」であり、基本的には貿易は拡大することを善としている。

その点で、資本主義の盟主である米国が関税を引き上げてくることは通常は考えられなかった。実はこの「通常は考えられないこと」ということが、トランプの経済政策を理解するときに大事な点ことである。

WTO(世界貿易機構)という組織がある。自由貿易を促進するための組織で、現在、国際連合加盟国193カ国のうち164カ国が参加している。以前は、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)という組織であったが、それよりもコミットメントが高まっており、高いレベルの約束となっている。

WTOの最も基本的な大事なルールに、一言でいうと「勝手に関税を上げない」というものがある。

ただし、これには例外条項があり、安保上問題がある国に対してだけ、言い換えれば戦争状態に近い国に対してだけはその限りではない。トランプはこの条項を活用しているのである。

ところが関税の引上げ対象には日本や欧州も含まれている。そのため、日本政府が「同盟国なのに」といって不満を示しているのはこのためである。

 

トランプの合理性

「経済学」が求める合理性は、医学と同様に問題を解決し、より良くすることを指向するものである。その点からは、トランプの関税の引き上げ、すなわち貿易を縮小させる政策はアメリカ経済の観点からも違和感がある。

それはこの政策が「経済」ではなく、「政治」に基づいたものだからである。このような政治的要請を最優先にし、そのほかの合理性を無視した政策決定の在り方の極端な形が「ポピュリズム」(大衆迎合主義)」と呼ばれている。

政治家は選挙で落ちたら唯の人である。突き詰めた言い方をすれば、数年という周期で、選挙がある。

そのため長期的な経済政策よりも、票を集めることに力点が置かれる可能性が高い。逆に言えば、長期的・改革的な政策は一般国民に評価されにくいということができる(これは国民のレベルの問題ともいうことができるが)。

政治家、特に米国大統領が国民の支持率を気にするのは当然であるが、トランプが政策としてターゲットにしているのは「白人工場労働者(含む鉱業)」である。

アメリカの白人工場労働者はもともと組合に所属し、社会民主主義的な民主党支持であった。

トランプが共和党政権の中で安定的な運営を可能としているのは、大統領選挙の時にその白人工場労働者向けの政策を全面に打ち出すことにより、彼らの票を大量に民主党から共和党へ集めたからである。

そのため、トランプは彼ら向けの政策を継続、言い換えれば、彼らの支持率が大事となっている。もっといえば国民の支持率よりも、彼らの支持率を重視している。そう考えるとトランプの関税や移民などの経済政策は良く分かる。