和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか

決め手の「ヒ素鑑定」が揺らいでいる
田中 ひかる プロフィール

事件はまだ終わっていない

真須美の死刑確定後、再審請求を行った弁護団は、蛍光X線分析の第一人者である京都大学大学院工学研究科教授の河合潤に、中井による鑑定書の解説を依頼した。

その後、河合が独自にヒ素の再鑑定を行ったところ、林宅の台所にあったヒ素は不純物が含まれ低濃度であるのに対し、紙コップに付着していたヒ素は75%(亜ヒ酸濃度に換算すると98.7%)と高濃度であることが判明した。

言うまでもなく、低濃度のヒ素を紙コップに移しても、高濃度にはならない。

また、ヒ素を摂取したり接触したりすると、その痕跡が毛髪に残るため、検察は真須美の頭髪の鑑定も行い、有罪の根拠としたのだが、河合はこの鑑定に対しても疑義を唱えている。

 

弁護団は、2013年2月に、ヒ素鑑定に対する反証を盛り込んだ「再審請求補充書」を、2014年3月には河合によるヒ素の鑑定書を和歌山地裁に提出した。

しかし2017年3月27日、地裁は「(中井鑑定の)証明力が減退したこと自体は否定しがたい」が、「それだけで有罪認定に合理的な疑いが生じるわけではない」とし、再審請求を棄却した。

弁護団は、大阪高裁に即時抗告を行うとともに、ヒ素鑑定を行った中井泉らを相手取り、6500万円の損害賠償を求める民事訴訟を提起した。

民事訴訟は再審への突破口となるのだろうか。それとも林真須美は、このまま大阪拘置所で一生を終えることになるのだろうか。いずれにしても、和歌山カレー事件はまだ終わっていない。

(文中、敬称略)