和歌山カレー事件・20年目の真実〜林真須美は本当に毒を入れたのか

決め手の「ヒ素鑑定」が揺らいでいる
田中 ひかる プロフィール

「『やりました』の五文字を書け」

カレー事件が起きたとき林夫妻が疑われたのも、ヒ素を使って保険金詐欺を繰り返していたことが明らかになったためである。さらに真須美は夏祭りの日、出来上がったカレー鍋の見張り番の一人でもあった。

カレー事件は発生当初、「集団食中毒」と誤認されたが、翌日、被害者の吐しゃ物や体内から「青酸化合物」が検出されたことから、「青酸カレー事件」と報じられた。

そして事件から1週間後、「ヒ素も混入されていた」ことが判明した。つまり、2種類の毒が混入されていたということになる。

ヒ素の混入が判明したことで、林真須美とカレー事件がつながった。一方で「青酸化合物」の存在はフェイドアウトしていく。

警察は「青酸化合物は混入されていたものの、犠牲者たちの死因はヒ素だった」と発表し、最終的には「青酸化合物は混入されていなかった」と結論づけた。真相は不明である。

 

事件から1ヵ月後、過去に林宅で食事をしたことのある男性2人が、急性ヒ素中毒に陥ったことがあると報じられると、林宅を取り囲む報道関係者の数は、一気に数百人に膨れ上がった。

真須美が外出すると、それを追う記者たちの足音がドドドドドと地鳴りのように響きわたるほどだった。真須美が“放水シーン”を撮られたのもこの頃である。

10月4日に夫婦が保険金詐欺関連の容疑で逮捕されたとき、林家を取り囲んだ報道関係者の数は500人以上に上り、上空には10機を超えるヘリコプターが旋回していた。

各テレビ局が早朝から現場中継を行い、読売新聞は全国で約15万部、朝日新聞は約8万部の号外を刷り、夫婦の逮捕を伝えた。

逮捕後、和歌山西署で取調べを受けた林健治は、真須美と共謀した保険金詐欺の容疑を認め、2000年10月に懲役6年の刑が確定した。

一方、真須美の逮捕は、カレー事件について自白させるための別件逮捕だったため、和歌山東署で連日長時間にわたって、厳しい取調べが行われた。

真須美は取調べ3日目には、「頭が変になり、目に幻覚というものが見えてきて、気が狂いそう」になったと、健治に宛てた手紙に書いている。