豪雨災害が起こった時に、政治家は最優先でなにをすべきか

視察をするより大事なことがある

災害が起こる確率の計算方法とは

先々週から西日本で記録的な豪雨があり、未曾有の被害が出ている。そのため、安倍首相は、欧州訪問をとりやめ、被災地を視察することとしている。

(被害に遭われた皆様、心よりお見舞い申し上げます。)

その一方、立憲民主党など左派野党や一部マスコミは、5日夜に安倍首相や自民党議員が衆院議員宿舎で開いた懇親会について批判している。

筆者の感想をいえば、こうした「政治利用」はどちらの側からみても見苦しいので、やめたほうがいい、ということだ。むしろ重要なのは、これから政治がどのように自然災害に立ち向かうか、である。

 

筆者は、6月25日付けの本コラム「南海トラフに備えるために、日本には100兆円の地震対策が必要だ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56257)で、「日本に災害対策のための財源がない、というのは間違い」と指摘している。

筆者の議論のベースにあるのは、現在の日本の財政事情が悪くない、という事実認識である。さらに、南海トラフの発生する確率と日本財政が破綻する確率を比較して、ものを述べている。南海トラフが起こるのと、日本が財政破綻するのはどちらの方が確率が高いか。こうした発想は、文系官僚や政治家には苦手な人が多いが、ある種の意思決定をする場合には、どうしても確率計算が必要である。

例えば、ワールドカップの一次リーグでの日本-ポーランド戦において、日本代表チームが1点負けている状況で日本が攻めなかったことを批判する人もいる。しかし、あの戦法のほうが一定の条件の下で日本の一次リーグ突破確率が高いので、極めて合理的であった。それを「ギャンブル」という表現で揶揄する者もいたが、どのような意思決定でも、不確実な条件で確率計算に基づくものという意味では、すべて「ギャンブル」なのである。

もっとも、「ギャンブル」とは、冷静に確率計算をすると、プレイヤーの平均的な収益(期待値)は「負け」にあり、胴元だけが平均的に「勝てる」ゲームのことを指す。その意味では、日本代表の行動は「ギャンブル」ではなく、冷静かつ合理的な判断であったといえよう。

さて、南海トラフ地震が発生する確率は、今後30年間で7割以上とされている。意外と知られていないが、これを計算する方法は、案外とシンプルである。過去の南海トラフ地震が起きた回数を調べて、年数で割ると、平均的な地震間隔がわかる。南海トラフは約100~150年周期で起こるといわれるが、前回地震から周期の半分が経過する間に、次の地震が発生する確率は50%になる、とみるなど、時間とともに発生確率が増していくように考えて計算されている。

それに基づいて、政府は「南海トラフは、今後30年間で7割以上の確率で起こる」というわけであるが、より正確にいえば、今後20年以内では4割以上、今後10年間は2割程度、今後5年間は1割程度と計算できる。

一方、日本の財政が破綻する確率についてはどうか。この計算には、市場の情報を利用しよう。日本国債についてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のレートが国際金融市場で取引されている。

これは、日本政府が破綻した場合に保証してもらう「保険料」のようなものだが、現在のレートは0.2%程度である。この水準は、世界の中でも最低レベルだ。これをもとに、これから今後5年間で日本政府が破綻する確率を算出できる。オプション理論の教科書を見ればわかるが、日本が今後5年で財政破綻する確率は1%程度と、無視できる程度だ。

もし、そうでないと主張するなら、CDS市場で儲けることができるので、是非やってほしいものだ。これまでテレビなどに出演した際、筆者の意見を否定する人もいたので、「そう思うなら、是非ともCDS市場で儲けて欲しい」と反論するのだが、彼らが実際に儲けたという話は聴いていない。

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