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ビールの廃棄物がパンに! ケーキに! しかも高栄養価!! 

廃棄物をおいしく食べる製粉革命

仕事が終わった後のビールは至福の飲み物だ。多くの人はそう考えるだろう。

だがビールから新たな仕事を作り出している人がいる、と米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。

毎日、ビール醸造工場からは何千トンもの麦芽かすが廃棄されている。これらはごく一部が家畜の餌や培養土、燃料として再利用されるだけだ。

麦芽粕ビール醸造所で出る麦芽かす Photo by Getty Images

しかし、バーサ・ヒメネスさん(35歳)は、麦芽かすを麦芽粉末に変身させる「ライズ・プロダクツ」なる会社を起業したのだ。

ヒメネスさんはエクアドルからの移民。ニューヨーク大学で工学の博士号を取得している。博士課程在学中にこのプロジェクトを思いつき、地元のビール醸造業者に連絡をとったのが始まりだ。

超有名シェフに採用された!

ビールの醸造は、大麦を発芽させて麦芽にするところから始まる。これを細かく破砕して湯に浸し、アルコールを作る際に鍵となる糖分を含む麦汁に変える。この段階で麦芽かすは不要となり、廃棄されてしまうのである。

業者から麦芽かすを分けてもらったヒメネスさんは、まず仲間とこの麦芽かすを食べてみた。玄米からコクを除いたようなものだったという。お菓子に混ぜてみたりしたが、どうもうまくいかない。

 

どうしたらいいか地元の業者に相談したところ、ある製パン会社のオーナーからアドバイスをされ、粉末状にしてみることにしたのだ。

現在、ライズ・プロダクツは地元のクラフトビール醸造工場から出た麦芽かすをオーブンで乾かし、砕いて製粉し、ふるいにかけて上質な麦芽粉末「スーパー麦粉(Super Flour)」を作っている。すべて手作業なので割高な価格だが、リサイクルに意識の高い店から多くの引き合いが来ているという。

すでにニューヨーク近辺では、普通の小麦粉と混ぜ合わせて作るクッキーやケーキなどが市販されている。

それどころか、スーパー麦粉の輸出もはじまっている。しかもその輸出先は「超大物」だ。2016年度の「世界ベスト・レストラン50」で世界一に輝き、いま世界で最も予約がとりにくいレストラン、北イタリアのモデナにある「オステリア・フランチェスカーナ」である。

ヒメネスさんから営業メールを受け取ったイタリア人シェフにして経営者、マッシモ・ボットゥーラ氏が、ライズ・プロダクツの麦粉を注文しているのだ。