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マレーシアを揺らす93歳マハティール首相の「法に基づく"報復"」

前首相逮捕は選挙公約を守ったまで

高等裁判所での罪状認否

5月の総選挙で独立以来初の政権交代が実現し、マハティール首相が返り咲き、ナジブ・ラザク前首相が率いる与党が野党に転落したマレーシアで、マハティール政権による前首相の在任中の不正疑惑問題への追及がついに本格的に動きだした。

マレーシア検察当局は7月4日にナジブ・ラザク前首相を3件の背任容疑と1件の腐敗防止法違反の容疑で高等裁判所に起訴。ナジブ氏はその前日の3日、クアラルンプール市内の自宅で容疑を固めるための捜査を進めていたマレーシア汚職対策委員会(MACC)によって逮捕されていた。

罪状認否に臨むナジブ前首相〔PHOTO〕gettyimages

MACCや検察当局は、これまでの捜査から、ナジブ氏が首相在任中(2009年~2018年)の2009年に自らの影響力を行使して設立した政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」とその元子会社「SRCインターナショナル」から、2013年に自身の個人口座に約4200万マレーシア・リンギット(約11億5000万円)を送金させていたことを突き止めた。これが背任罪や腐敗防止法違反に相当し、公判を維持できるだけの証拠があるとして前首相の逮捕・起訴に踏み切った。

マレーシアでは独立以来6人が首相を経験しているが、在任中の不正疑惑で逮捕・起訴されたのはナジブ氏が史上初めての事例となる。

 

ナジブ前首相は以前から一貫して不正疑惑に関して「無罪」を主張しているが、今後の裁判で3件の背任罪と1件の腐敗防止法違反容疑で有罪判決が下された場合、むち打ち刑および最長で20年の禁固刑、さらには被害額の約5倍に相当する多額の罰金刑が科される可能性があるという。

7月3日に身柄を拘束されたナジブ前首相は、翌4日午前8時すぎ、首都クアラルンプールの初級裁判所に出廷した。検察側が罪の重大さを理由に裁判を高等裁判所に送致したことを受けて、ナジブ前首相は同日午前10時半ごろから高等裁判所での罪状認否に臨んだ。

裁判所に出入りするナジブ前首相は、警察官らに周囲を厳重に守られ、報道陣の問いかけには一切答えず、詰めかけた支援者や親族にだけは笑顔で対応していたという。

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「マハティール氏の報復」なのか

ナジブ前首相は逮捕された3日夜、逮捕を予想して事前に用意していたとされるビデオメッセージを発表した。

「私と私の家族に関する疑惑は全て事実ではない。起訴されたことが全て事実とは限らない」と全面的に疑惑を否定するとともに、「これはマハティール政権による政治的な報復であり、これからの法廷で無実を明らかにしていきたい」と法廷闘争を通じて無実を証明する意向を示し、マハティール首相による政治的報復であるとの見方を強調した。