慢性片頭痛は、実は「ちちんぷいぷい~」で治せます

間違いだらけの片頭痛②片頭痛予防体操
坂井 文彦 プロフィール

片頭痛予防体操は百薬の長

そもそも脳血管が拡張して炎症を起こすと片頭痛が起こります。その痛み信号は三叉神経などを経由して、視床に伝えられます。視床からはさらに中枢の大脳皮質に痛み信号が伝わり、我々はここで痛さを感ずるのです。

痛み信号は視床を通過する過程で、周りからいろいろな影響を受けます。たとえば扁桃体では感情や情緒の影響により痛みかたが変わって脳に送られます。

さらに重要なことは、海馬やその周辺の大脳辺縁系に痛みが記憶されることです。つまり、痛みを記憶する回路ができてしまうのです。片頭痛が慢性化すると「痛み記憶回路」が成長し、そこから脳のあちこちに痛み信号が送られますが、頭痛のない時にも「痛み記憶回路」から痛み信号が送りだされるようになるのです。

圧痛点もその結果生ずるのです。常に痛みに敏感になり、頭痛のない時でも指の圧迫で強い痛みを感じます。それが片頭痛圧痛点なのです。

「痛み記憶回路」といわれても、まだピンと来ないかもしれません。繰り返し起こった片頭痛の強い痛みが脳に記憶されてしまうのです。「記憶」というと、あの認知症で萎縮する海馬が有名です。痛みの記憶も海馬を中心とした「大脳辺縁系」という神経回路に記憶されます。

片頭痛予防体操で片頭痛の圧痛点をストレッチすると、信号が痛み記憶回路に送られ、その結果、痛み記憶回路から痛み信号が発信されなくなるのです。脳に良い信号を送り、脳が言うことを聞いてくれた、片頭痛がよくなるということです。

ストレッチ体操して、首から善玉信号を脳に送れば痛みを感じなくなる……、というのが片頭痛体操の発想です。

にわかには信じがたいかもしれません。

片頭痛予防体操というのは、後頭部の第3頸神経部分からストレッチ信号を脳に送るものです。送られた信号は痛み回路を遮断し、痛みの記憶を減らしていくことで片頭痛の慢性化を予防するのです。

ストレッチ信号という良い信号を脳に送ることにより、片頭痛の圧痛点を解消し、痛み伝達のゲートを遮断することで、電気刺激より簡単に安全に自分でできる予防法です。

少し難しい理屈は、もしこの「片頭痛体操」に効果があることを実感いただけたら、私の最新著書『片頭痛からの卒業』(講談社現代新書)を読んでいただければと思います。

 

繰り返しになりますが、頭痛体操で圧痛点がなくなるということは、脳があなたの言うことも聞いてくれるということです。

だから片頭痛は自分で治せるのです。

「痛いの、痛いの、飛んでけ~」という良い信号を、脳に送り続ける片頭痛予防体操は、鎮痛薬を飲み続けるよりはるかに効果的な、「百薬の長」なのです。

「片頭痛」卒業のためのクスリとのつきあい方、自分で予防する体操の方法などを網羅する坂井氏の近著

坂井文彦(さかい ふみひこ)
埼玉国際頭痛センター長。1969年慶應義塾大学医学部卒業後、同内科学教室に入局し、神経内科および脳循環・代謝の研究を始める。76年米国ベイラー医科大学神経内科留学。Harold G. Wolff賞受賞(片頭痛と脳循環の研究)。97年11月北里大学医学部神経内科学教授。2010年11月より埼玉医科大学客員教授、埼玉国際頭痛センター長として日本初の頭痛専門病院を立ち上げる。日本頭痛学会、国際頭痛学会の理事長など重職を歴任した頭痛治療の世界的名医で、長年にわたり、日本の頭痛医療を進化させてきた。「頭痛そのものが脳の病気」「薬を上手に使うことでコントロールできる」「頭痛ダイアリーは必ずつける」「片頭痛予防体操で慢性化を防げる」等、啓蒙活動に尽力。監修書に『きょうの健康シリーズ 頭痛で悩む人に』(NHK出版)がある。このほど『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)を上梓した。