慢性片頭痛は、実は「ちちんぷいぷい~」で治せます

間違いだらけの片頭痛②片頭痛予防体操
坂井 文彦 プロフィール

片頭痛予防体操のやり方

片頭痛予防体操は片頭痛の「慢性化の予防」のために考えた体操です。下の図を見てください。

できれば図のAのように立ってやるのがよいのですが、オフィスなどで仕事の合間にやるなら、Bのように椅子に座って体操をしても同様の効果が得られます。

動きはシンプルです。正面をむいて、両足は肩幅に立ち、肘をほぼ直角に曲げたまま、胸の前に持ち上げます。そのまま、両腕と肩を水平に左右交互に半円ずつコマのように回転させます。顔は正面を向いたままで、背骨の柱を中心として肩まわしをするのがコツです。リズムに乗せて行うのがよいでしょう。

肘を後ろに引っ張るようにするほうがよく回ります。肩が回り始めたら、引き続き背骨を1本の柱あるいは軸と意識し、胸も、胴も、腰も一緒に回します。肩から腰が胴体ごと背骨の柱の周りを左右交互に回っている感じです。

これはストレッチ体操です。体に力を入れずに、リズムに乗った体操ができれば、腰、背、首といった体幹を支えているすべてのインナーマッスル(深層筋群)がストレッチされます。

腰や背のインナーマッスルは体幹の脊椎をしっかりと支えている小さな深層筋群で、通常は伸縮したり動いたりしません。ストレッチすると筋肉とともに筋肉の周りの細い神経が伸展し、その刺激が信号として神経を介して脳に伝わります。

筋肉や、その周囲の神経をストレッチで生じた信号をストレッチ信号と呼びます。この信号は腰髄、胸髄を介して脳に送られると同時に、内臓にある交感神経、副交感神経とも合流します。

首のインナーマッスルと神経を頭痛体操によりストレッチすると、ストレッチ信号が頸髄神経から脳に送られます。体幹を回すとき、首や顔は回さず正面を向いていることがポイントです。

まっすぐに前を見ながら行うと、首の後ろの圧痛点がストレッチされやすくなります。さらに、リズムにあわせて体幹を回すのがコツです。

そうするとストレッチ信号にリズムが乗って脳へ送られます。脳の痛みの回路にリズムが送られと、痛み調節系のセロトニンが活性化されるのです。

 

頭痛体操で片頭痛圧痛点がなくなる

頭痛体操は、自分ひとりで、自宅でも、オフィスで座ったままでも簡単にできる体操です。2分以内にします。普段ストレッチしていないインナーマッスルを全部一緒にストレッチすることになりかなり疲れるからです。

私の外来では片頭痛の患者さんにこの体操をしてもらったあと、首の後ろの片頭痛圧痛点をもう一度、体操の前と同じように指で押してみます。

「こうして、体操の前に押されてとても痛かったところを同じように押します。痛みが前と違ったら教えてください」

「エッ、痛みがなくなっています。どうしてですか?」

慢性片頭痛の患者さんでは、圧痛点の痛みの強さが10だったとすると、体操をするだけで4以下、少なくとも半分以下になる人がほとんどです。

「痛みがなくなったということは、脳へ送ったストレッチ信号に脳が反応した、脳がいうことを聞いてくれたということです。それも、脳からの痛み信号が減った、それで頭痛がよくなるということなのです」

こう、はっきりと患者さんに言えます。

痛みが伝わってくる回路に逆に適切な信号を送ると、痛みが来なくなるわけです。

慢性の痛みの治療法として、痛みの部位に弱い電流を流す方法があります。これは、痛みの神経は一度に一つの痛みしか伝えない性質があることを利用するのです。痛みが生じている神経回路に別の信号を送ると、それまであった痛みが緩和されることはよく知られています。痛み線維に弱い電流の代わりに磁気刺激をすることで痛みを緩和する治療法もあります。

理屈は同じ。慢性片頭痛を攻め落とす突破口が見つかったことになります。

頭痛体操は、片頭痛の慢性化の予防にはベストな方法です。片頭痛の頻度が月に2回以上の患者さんに勧めています。片頭痛が繰り返し起こってできてしまった「痛み記憶回路」を壊滅させるのが目的です。

「自宅で、簡単に、自分でできる」予防体操です。体操は毎日2分間していただきますが、体操が上手にできない方は理学療法士の指導を受けてもらいます。体操する自分を姿見用の大きな鏡で見ながら練習すると、上達が早いようです。

慢性片頭痛が重症になった場合は片頭痛予防薬など他の治療法も併用します。私たちの病院では2013年の国際頭痛学会で、慢性片頭痛の改善率68%と報告しましたが、頭痛体操がかなり貢献していると考えています。

無理なく、スムーズに体操ができるようになったら、毎朝、起きて2~3回の背伸びのあと、ストレッチ体操の頭痛体操を2分間します。朝の体操で脳も活性化するのです。

大事なことは、朝の2分間の体操を毎日続けることです。片頭痛を予防するため脳に向けてストレッチ信号を送り、片頭痛の慢性化を予防します。ぜひ続けて下さい。

ただし片頭痛の最中の頭痛体操は禁止です。動くと頭痛がひどくなるのが片頭痛の特徴だからです。体操して頭痛がひどくなったら片頭痛だから体操はやめるのが大原則です。