慢性片頭痛は、実は「ちちんぷいぷい~」で治せます

間違いだらけの片頭痛②片頭痛予防体操

子どもがどこかをぶつけて痛くて泣いているとき、お母さんが痛いところをさすってあげながら、「ちちんぷいぷい、痛いの、痛いの、飛んでけ~」と、おまじないを言うと、子供が痛さを忘れて泣き止むことがあります。

実はこれ、単なる「おまじない」ではありません。手でさすると痛みが和らぐというのは、医学的に根拠のある現象なのです。「ゲートコントロール学説」と言います。

痛みが伝わる回路に、別の新しい「良い刺激」を与えると、痛みの伝達が抑制される、すなわち別の刺激が回路を占領し、痛み刺激の入るゲートが遮断されるという理論です。

慢性疼痛の治療として弱い電気刺激を連続的に流す方法は、リハビリテーションやハリ治療などで行われています。

実はこれと同じ理論で、慢性的な片頭痛を予防することができます。それが私が考案した「片頭痛予防体操」。1日2分でOKのストレッチ体操です。

片頭痛の圧痛点を発見!

頭痛体操を考案したのは、約10年前に「片頭痛にも圧痛点がある」ことに気づいたことが始まりでした。圧痛点というのは、文字通り、診療するとき「圧迫すると痛く感じるところ」です。

当時、緊張型頭痛(片頭痛と並ぶ二大慢性頭痛ですが、痛みの原因、対処法は片頭痛と違います。詳しくは「間違いだらけの片頭痛①」を参照してください)の場合、首に筋肉がゴリゴリする圧痛点があることは知られていましたが、片頭痛にも圧痛点が存在することは誰も言っていません。

片頭痛が頻回な40歳後半の患者さんとの診察室での会話と治療が、発見のきっかけでした。診察室を再現しながら説明しましょう。

 

「先生、私の片頭痛は、首の後ろの痛みから始まるので、今まで何回も緊張型頭痛と診断されました」

「首が凝っている感じですか?」

と、私があいまいにお話しすると、

「普通に首が凝るというより、もっと強く痛む凝りです。だから、緊張型頭痛とは違う気がするのです」

と、患者さんはきっぱり言います。

患者さんに促されるように、首の後ろを触診してみました。筋肉が固くなってゴリゴリしていました。これは緊張型頭痛特有のストレスで筋肉が固くなるゴリゴリです。

「これは相当の首凝りです。筋肉が固くなってゴリゴリしています。ここの痛みではないですか?」

「先生、そこは押されてもイタ気持ちいい感じです。私の頭痛で痛くなるのは首のもっと内側、筋肉よりも中のほうで、少し上のような気がします」

そこで患者さんの言われるままに、首のゴリゴリより少し上の髪の生え際あたりで、頚椎の横あたりを指で押してみました。

「痛いっ! 先生そこです。鋭い痛みです」

患者さんが、押すと鋭く痛む場所を教えてくれました。それが下の図です。

緊張型頭痛特有のゴリゴリした圧痛点以外に、片頭痛の圧痛点があるのではないか?

私は、「片頭痛治療の糸口をひらめいた」と感じました。

脳の痛み信号の窓口

その後、外来で片頭痛患者さんの首の後ろの触診を何人も試してみました。私の外来はやや慢性化した片頭痛の患者さんが多いのですが、次から次と首の後ろの触診をすると、ほぼ全員に圧痛点があり、場所は2種類のどちらかであることがわかりました。患者さんの触診を50人くらいした時点で、私はもう確信しました。

「頭痛には実は2種類の圧痛点が首の後ろにある!」

一つは首の後ろで筋肉が硬く収縮しゴリゴリして、押されるとイタ気持ちいい。この圧痛点は、緊張型頭痛と総称されている頭痛の原因となる筋肉の硬いシコリです。これは、マッサージなどを受けたときに「クビが凝ってますね~」などと言われる凝りとほぼ同じです。

私が発見したのはもう一つのほうの圧痛点、「片頭痛の圧痛点」です。緊張型頭痛の方にはこの第2の圧痛点がないのです。

片頭痛にも圧痛点があることを発見した私は、脳の不思議なメカニズムを考えながら、仮説を立てました。

第一は、「片頭痛圧痛点」は、片頭痛の脳血管から首の表面の神経に伝わってくるのではないか。

第二は、片頭痛に悩む人の脳には、痛みの記憶回路ができてしまい、それが『片頭痛の圧痛点』として首に反映されているのではないか。

というものです。

少し乱暴に言ってしまうと、片頭痛の圧痛点というのは、脳の中で起こっていることが神経を通じて体の表面まで伝わってきた場所だろうということです。つまり、片頭痛の圧痛点というのは脳からの片頭痛の信号を知る窓口なのではないかとの考えです。

脳は痛み信号を受け続けているうちに、それを蓄積して記憶してしまいます。そして、片頭痛の記憶が増えてくると、脳は記憶の引き出しから、「片頭痛で痛い」という信号を出しやすくなります。その信号を探知するための窓口が「片頭痛の圧痛点」であろうというわけです。

私は、さらに300人を超える片頭痛患者さんのデータを蓄積、「片頭痛の圧痛点」の存在を2011年の国際頭痛学会で報告しました。

同時に、この「片頭痛の圧痛点」を改善することで、手軽に片頭痛をラクにできる「片頭痛予防体操」も合わせて世に問うたのです。

もちろん、片頭痛に悩む患者さんたちには、圧痛点とその解消に役立つ頭痛体操は、より説得力があったようで、大歓迎されたのです。

頭痛体操を日課にしていただいた患者さんの多くは、「頭痛はただクスリで痛みを抑えたりするだけではなく、セルフケアで治すものだ」ということに気付いてくれます。患者さん自身が頭痛体操により、薬を使わずに片頭痛の改善を実践しています。

では、片頭痛体操のやり方を説明しましょう。