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公務員史上最大の事件「東京医大への裏口入学」はなぜ起こったか

一番のバカは誰か

次官候補のエリート

「佐野さんは、汚れ仕事を嫌がるタイプで、ややこしい仕事は自分ではやらずに、さばいて部下にやらせるような人でした。でも、自分を慕う人は可愛がる一面もあった。佐野さんに付いたほうが得策だと考えて、従っていた人も多かった。

一方で、上の人に取り入るのは上手かった。着々と次官ルートに乗って出世していましたし、そういう意味では『ずる賢い人』なんだと思っていましたが……」(文科省関係者)

7月4日、文科省の私立大学支援事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で逮捕された前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(58歳)。

佐野は、自分の息子を東京医科大学に入学させることを条件に、同校の「私立大学研究ブランディング事業」への選定を斡旋したとみられる。

次官候補のエリートは、順調な官僚人生のゴール直前に、なぜこのような事件を起こしてしまったのか。

早稲田大学大学院理工学研究科を修了した佐野は、旧科学技術庁を経て、文科省の官房長など、要職を歴任してきた。将来の次官候補として名前を挙げられていたという。

「天下り問題で辞任した前川(喜平・前文科事務次官)さんとは、かつて上司と部下の関係でした。前川さんの次官時代に、官房長を務めていたのが佐野さんだったんです。

前川さんは、今回の件を聞いて驚いていたようです。『なんで佐野が……』と、今もショックを受けています」(同)

佐野はエリートであると同時に、「野心的な人物」としても知られていた。自分が「次官候補」であることを意識しており、「省内では、常に上の立場の人間の顔色を窺い、出世のために誰にすり寄ればいいのかを考えながら生きているような人だった」(文科省キャリア)という。

 

さらに佐野は、国会議員との折衝に長けており、政治への転出が噂されることもあった。

佐野の妻は、元文科大臣の小杉隆氏の娘だ。小杉氏と言えば、'10年、妻と私設秘書が架空の投資話で約1億8000万円をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕され、追われるように政界を引退したことで知られる。

佐野が政界とのパイプを持ちながらキャリアを重ねてきたのは事実だ。実際、地元の'15年の山梨県知事選では、自民党山梨県連から擁立の動きもあったというほどだ。

官界から政界に食指を伸ばさんとするやり手だった佐野。そんな男だけに、息子にもエリートたれ、と思っていたのだろう。

その願いがいびつな形で現れたのが、今回の「裏口入学」収賄だったと言える。実際、佐野のように、子どもを医学部に入学させるため、手を尽くすエリート層の親は多い。ある有名大学医学部の元教授が話す。

「私自身も、受験生の氏名と受験番号を入試担当者に渡し、点数をかさ増ししたことがあります。

一点数十万円で、百万円単位、親によっては1億円前後の『裏金』を出す人もいた。それほど、『子どもが医学部』というブランドは、親にとってかけがえのない誇りになるのです」