女性を避け、社会とも断絶、米国の非モテが起こす「サイレントテロ」

最終的には「出家」を目指す
八田 真行 プロフィール

日本からの大きな影響

MGTOWを巡る議論を見ていると必ず出てくる話が、日本の影響である。筆者がMGTOWについて最初に目にしたとき、日本のherbivore menと似たものであるという説明があった。

herbivoreとは草食という意味で、ようするに「草食系男子」のことである。また、先に出てきたレベル4のMGTOWはGoing Monk(僧侶になる)とかGoing Ghost(幽霊になる)と呼ばれるが、Hikikomoriと呼ばれることも多い。

 

さらに、MGTOWは女性が支配する社会への男性のストライキであるという見方がある。

2013年には心理学者のヘレン・スミスが「Men On Strike: Why Men Are Boycotting Marriage, Fatherhood, and the American Dream - and Why It Matters」という本を出しているが、副題の「なぜ男たちは結婚、父権、アメリカン・ドリームをボイコットし、なぜそれは問題なのか」という問題意識は、日本で10年ほど前に盛んに語られた、若者世代の少子化や消費の低迷は、自己責任を押しつけ自分たちを見捨てた社会への復讐として機能しているという「サイレントテロ」に近いものがある。

アメリカは自由の国と言われるが、ある意味で日本とは比較にならないくらい社会的抑圧の強い国だ。特に男性に関しては、女性と付き合えない、パートナーがいないような男は一人前ではない、というマッチョな男性観が根強い。

女性同伴が求められる高校卒業時のプロム・パーティ、冴えない奴は入れてもらえない大学におけるフラタニティ(学生親睦団体)、あるいは映画やドラマのようなエンターテインメントの世界でも、恋愛至上主義的な価値観がことある毎に植え付けられる。

そして恋愛においては、機会の平等はそれなりに保障されるにしても結果の平等は保障されないのである。

インセルにしても、リア充でモテる人々である「チャドやステイシー」を敵視しつつ、どこかであこがれ、崇拝しているところがある。

インセル革命は「ベータの反乱」(Beta Uprising)とも呼ばれるが、これは、チャドの別称であるアルファメイル(メスを支配するボスザル)に対する反乱ということで、裏を返せば自分たちベータはアルファに及ばない、ということに他ならない(ベータより更に下のオメガを自称する人々までいる)。

結局、自分たちを否定する社会の価値観を受け入れて内面化してしまっているわけで、そこにインセルの悲惨の根源があるわけだが、MGTOWは、そもそもそういった「男性は女性と付き合うべき」という価値観を元から排除するという点で、インセルよりラディカルであるとも言える。だからこそ、「我が道を行く」ということなのだ。

しかし、フェミニストやジェンダー論者が一所懸命やろうとしてきた男性性の解体を、日本の影響を受けた、それも「反」フェミニズムが変な形で実現しつつあるというのは、なんとも皮肉なものではなかろうか。

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