吉岡里帆主演ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』原作者に聞く

生活保護をマンガで描くということ
大西 連 プロフィール

タイトルに込めた想い

――徹底的な取材のなかでいざ連載が2014年にスタートするわけですが、この『健康で文化的な最低限度の生活』というタイトルはインパクトがありますね。

憲法の条文そのままなんですが(笑)

取材前に本を読んで勉強していた段階でなんとなく決めていました。描きはじめて、もうこれしかないなと。

編集者は「健康」と略していますがデザイナーさんは「ケンブンサイセイ」と言っていて、今回はドラマ化にあたって「ケンカツ」と略しているようですね。長いタイトルですから(笑)

描きながら、「健康で文化的最低限度の生活」を考えるマンガなのだということが少しずつわかってきました。生活保護の問題は論点がたくさんあるけれども、生きていくとは何か、社会はどうあるべきかが、根底にあるのではないか。そして、それを丁寧にマンガで描いていこう、と。

でも、マンガで描くには当然、マンガはエンタメだし、面白くなければ読んでもらえない。どんな社会的に良いとされることが描いてあったとしても、読者がついてこなければ連載も終了してしまいます。

私は漫画家なのでマンガとして描けることは何かを考えます。マンガを通じて社会と向き合うときに、私の作品を読んだ人が、生活保護というテーマとつながるにはどうしたらいいのか、と。

そのひとつは、読者が「生活保護についてどのような疑問を持っているのか」に答えることではないかと思ったんです。

生活保護に関するいろいろな報道やイメージがあって、怠けている人が利用しているんじゃないかとか、不正受給が多いんじゃないかとか……。

現場を取材して必ずしもそうじゃないと私は気がついたけれども、ほとんどの人はそういう経験ができるわけじゃない。

だからこそ、考えるための材料を提供したい、議論をするための前提の共有をしたい、と思いました。

 

ズルさ弱さ込みで不完全なのが人間

人間をちゃんと描きたい。人はミスをするし、うまくいかないこともある。

完全無欠なかわいそうな人、自分に過失がなくて困ってしまった人っているのだろうか。ズルさ弱さ込みで不完全なのが人間だと私は思っています。その上で社会はどうあるべきか。

就労支援、不正受給、扶養照会。世帯、アルコール依存症――。そして、現在は子どもの貧困をテーマにしています。

最初に作中で取り上げたのは、就労支援でした。それは、生活保護の人はなぜ働かないかという社会の問いがあるから。

その課題を抱える人、良い部分も悪い部分も人間を描ききることで、社会の生活保護への問いに対しての議論の前提を共有したい、考える材料にしたいと考えました。
不正受給についても扶養照会についても、取材をして見えてきたことがあります。

(C)柏木ハルコ/小学館
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これは、社会が放置していいのか、自己責任でいいのかという問題。いろいろな課題があったときに、本人もそれではいけないと思っていて、でも、どうしていいのかわからないだけなのではないか。

アルコール依存症編は大きな反響がありました。答えを出すというよりは、いいとか悪いとかではなく、税金でギャンブルや酒は良くない、と言い続けても何も解決しないし、どう解決するかを考えないといけないのではないか、と。

(C)柏木ハルコ/小学館
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