3.11から7年。放出された放射性物質はどこに行ったのか?

放射能汚染の「その後」(前編)
雨宮 崇 プロフィール
表面水のセシウム134濃度の経年分布(実線はおおよそ10Bq/m³の部分)(Aoyamaほか,2013)表面水のセシウム134濃度の経年分布(実線はおおよそ10Bq/m³の部分)(Aoyamaほか,2013)

また、それらの観測値と海流モデルなどを組み合わせ、放射性セシウムの拡散シミュレーションも行われました。

その結果を見てみると、放出された放射性セシウムは、薄まり広がりながら東側に流れていき、事故から4~5年後の2015~2016年にアメリカ西海岸付近に到達したことがわかります。

原発由来の放射性セシウムの拡散シミュレーション(丸印は実測値)(Tsubonoほか,2016)

北太平洋の表面海水に存在するセシウム137の量は、約8PBqと見積もられています。海洋に放出された総量が15〜18PBqと推定されているので、およそ半分が表面海水に存在し、薄まりながら東へ移動したといえます。

また、その移動速度は約7km/日。その速度は日付変更線を超えたあたりから遅くなり、約3.5km/日程度になったと見積もられています。

 

沈み込んで南下していった放射性物質も

放射性物質は表面水中だけに残っているわけではありません。ここまで、海流の水平方向の移動により拡散する放射性物質の様子を見てきましたが、海流の中には、深さ方向にももぐりこみ循環している「モード水」と呼ばれるものもあります。

たとえば、東経165度の線に沿った鉛直方向の分布を見てみると、表面水に存在していた放射性セシウムの一部が亜熱帯モード水に乗り、北緯30°~35°あたりでより深い方向へともぐっていることが分かります。

セシウム134亜熱帯モード水に取り込まれるセシウム134(Kumamotoほか,2014)

モード水としていったん沈み込んだものは、赤道付近から再び日本近海に戻ってきます。

その周期は約30年と見積もられているので、30年後に原発事故由来の放射性セシウムの一部が還ってくる、ともいうことができるでしょう。ただし、その段階で半減期の作用もあると思われます。

太平洋における放射性セシウムの内部循環予測太平洋における放射性セシウムの内部循環予測(数字は水深を表す)(Courtesy of Dr. Aoyama)

少量ではあるが、今なお続く直接漏洩

次に、原発からの直接漏洩について見ていきましょう。

東京電力が公開している原発近海のセシウム137濃度のデータによると、事故後すぐに減少するものの、特に原発1km地点では、事故から数年が経った後も、事故前の濃度範囲までには下がりきっていないことが見て取れます。

つまり、事故後ほどの濃度ではないものの、いまだに直接漏洩が続いていることがわかります。

表面海水中のセシウム137濃度の推移表面海水中のセシウム137濃度の推移
(東京電力、公益財団法人海洋生物環境研究所のデータをもとに日本科学未来館が作成)


現時点まで、海洋に流入した放射性物質の動態についてまとめると、以下のようになります。

●原発由来の放射性セシウムは、15~18PBq。
●そのうち、海洋表面を東に薄まりながら移動していったものが8PBq。
●そのほかの大部分は亜熱帯モード水および中央モード水として海洋の内部循環に沈みこんでいる。
●量は少ないものの、いまだ直接漏洩も続いている。