最速の「クロール」泳法が見つかった! ロボットに泳がせてみたら…

S字かI字か、論争に決着
東京工業大学 プロフィール

中島教授が開発した水泳人体シミュレーションモデル「SWUM(スワム)」とその実装ソフトウェア「Swumsuit(スワムスーツ)」は、泳ぎのフォームの違いにより生じる身体各部に働く流体力や運動の変化など、水泳におけるさまざまな力学的問題の解析ができる。

「クロールだけでなく、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4泳法のシミュレーションが可能です。最新型のSWUMでは、運動だけでなく人体の各部分の筋力がどのように発揮されているかがわかる筋骨格シミュレーション機能も搭載されています」

研究グループのもうひとつの秘密兵器は、水泳ヒューマノイド「SWUMANOID(スワマノイド)」。実在する競泳選手の体格を三次元ボディスキャナでデータ化し、1/2スケールで再現したロボットだ。

合計20個の防水処理をしたモーターをコンピュータ制御して全身の関節を動かし、実際の泳ぎを想定した複雑な運動が可能となっている。

前述した「S字」「I字」それぞれの“渦”の発生メカニズムは、このSWUMANOIDのような水中ロボットを筑波大学にある大型回流水槽で泳がせることによって突き止められた。

水泳人体シミュレーションモデルSWUMによるクロールの解析図。 身体から出ている赤い線が、身体各部に働く流体力を表している
SWUMを使えば、水泳の全身筋骨格シミュレーションも可能。 クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4泳法に対応している

人間への興味が研究に向かうエネルギー

中島研究室を一言で説明するのは難しい。水泳の研究も工学の視点からスポーツを研究する「スポーツ工学」、機械力学の方法論を人の身体に応用する「バイオメカニクス」、そしてSWUMANOIDを生んだ「バイオロボティクス」といった分野に分かれている。

「従来の機械工学を応用しつつ、また情報という視点を加味しながら、人間に関するさまざまな謎を解き明かしていこうというのが本研究室のスタンスです」

中島教授は東工大OBでもある。学部時代に魚やイルカの遊泳メカニズムの研究に着手し、15年ほど前から人間の水泳を研究対象とするようになった。

「高校生の時は物理や数学が好きでしたが、大学では物理と数学そのものではなく、それらを使って世の中に役立てるような研究をしたいと考え、機械力学を専攻しました。

卒業研究にあたって教授から『魚とイルカの泳ぎを研究してみないか?』と誘われて、『やってみます』と即答しました。なにか面白そうだ! と直感したんですよ」

その学部時代の卒業研究が、現在の水泳の研究のルーツとなり、大きな成果を生んだ。中島研究室では現在、水球選手の投球動作の研究、義足など障害者の水泳の研究や泳ぎが不得意な人のための水着の研究など、水泳関係だけでも多岐にわたる研究テーマに取り組んでいる。

また、浴槽メーカーとの共同研究として、入浴中の人間が浴槽内でどのように力を込めているかという面白いテーマの研究も行っているという。入浴中、人間は完全にリラックスしているわけではない。溺れないように無意識に筋肉に力を入れている。

「その力の入り方をSWUMによるシミュレーションなどによって調べています。この研究成果は、やがて安全で心地よい浴槽の開発につながるのかもしれません」

もっともっと人間の原理・理屈を知りたいという好奇心が研究に向かうエネルギー。そう目を輝かせて語る中島教授のまわりには、自然とテクノロジーと人間の関係に興味を抱く学生が集まってくるようだ。

東京工業大学発行「リアルを伝える情報誌TechTech~テクテク~ No.30」

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記事提供:東京工業大学

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