「奴隷的環境」で働かせるのに、外国人労働者増を目指すこの国の奇妙

50万人受け入れるとは言うけれど…
山下 知志 プロフィール

増加しつづける失踪外国人

彼らは、コンビニや飲食店、宅配荷物の集荷場などで、なくてはならない存在になっているが、「特に日本語学校や専門学校に出稼ぎ目的の偽装留学生が多い。入学金や授業料目当てに、偽装留学生だと知りながら受け入れる学校も少なくない。不法就労を助ける悪質な学校さえある」(警察関係者)

日本語学校などは、入学金や授業料を合わせるとは50万~200万円が必要だ。留学生の多くは借金で支払っている。学校には籍だけ残し、決められている週28時間の労働時間などは無視して掛け持ちで働くしかない。法務省は昨年、留学の在留資格を得るための審査を厳格化したが、まだ歯止めがかかっていない。

 

そんな彼らにとって、便利なツールがSNSだ。「ベトナム人に限ったことではないが、仲間同士で仕事や給料、より良い仕事環境の情報などがやりとりされている。また、仕事を紹介するブローカーの存在もある。稼げるとわかれば、すぐに行方をくらます」(同前)という。

失踪者の問題は、不法残留者の増加にも直結している。法務省によると2018年1月1日現在の不法残留者数は、前年比で2%増の6万6498人だった。これは4年連続の増加だ。つまり、この6万6500人余りのうち、1割強が失踪した技能実習生という計算になる。

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犯罪も増えた。2017年に全国の警察が摘発した来日外国人の犯罪は1万7006件。前年比で20%も増えている。このうち、ベトナム人による事件が5140件と全体の3割を占めた。外国人犯罪のトップランナーは、これまでは中国人が独走だったが、初めてベトナム人が最多になったのだ。

摘発されたベトナム人の事件の4割が店舗での万引きで、盗品をベトナム本国に空輸するなどして、換金したり、SNSを利用して売り捌いていた。失踪した技能実習生や留学生がグループを組んで、窃盗を繰り返していたケースも多いという。

折しも、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の原案で新たな在留資格を設けることを明記した。安倍政権は、外国人労働者の流入拡大を認める方針を示した。

その数、なんと50万人超。2025年ごろまでに目標を達成させようとしている。拡大業種は、農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種が想定されている。実現すれば、日本で働く外国人労働者は、いまより一気に4割増える。対象業種のさらなる拡大も視野に入っているという。

このまま外国人労働者を増やせば、奴隷まがいの労働に嫌気がさして失踪者はさらに増え、不法残留者のはびこる国になりかねない。人手不足は待ってはくれない。抜本的な解決策が急ぎ求められている。

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