「奴隷的環境」で働かせるのに、外国人労働者増を目指すこの国の奇妙

50万人受け入れるとは言うけれど…
山下 知志 プロフィール

殴る、蹴るの暴力沙汰も横行の現場

たとえば、縫製業を営む企業が、技能実習生6名に対し、約2年1カ月間にわたり、最低賃金を下回る基本給しか支払っていなかった。また、時間外労働の賃金を時給300円に設定。不払いの総額は6名分を合わせて約2100万円にのぼった。この会社は、技能実習生に実際に支給した賃金とは異なる金額を記載した虚偽の源泉徴収票を地方入国管理局に提出して隠ぺいを図ろうとしてもいた。

 

技能実習生に対して暴力をふるうケースもある。ある建設会社は、技能実習生に対して、「日本語を理解しない」などを理由に叩く、殴る、蹴るといった暴行を恒常的に行っていたことが判明。

ある食品加工会社は、タイムカードの打ち忘れに対し、1回当たり1000円の罰金を技能実習生に課していた。総額で10万円以上の罰金を不当に控除していたという。

実は、昨年11月1日から、技能実習生制度が新たに見直され、実習生への人権侵害には罰則規定が盛り込まれた。しかし、労働法規に則った雇用は守られず、使い捨ての安い労働力となっているケースは依然として多く、現場ではいまだに改善の兆しが見えていない。

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失踪の原因はそれだけではない。技能実習生が抱える個人的な事情がある。彼らは日本にやってくる時点で、すでに多額の借金を抱えているからだ。このことは、日本ではあまりよく知られていない。

ベトナムを一例にすると、「実習生は、現地の送り出し機関を通じて日本にやってくるが、在留資格認定証が発給された際に、機関側に手数料を支払う必要があります。その金額は、日本円で約40万円と法律で決まっている。この金額は、ベトナム人の平均的な年収分にほぼ匹敵する」(受け入れ機関係者)

ところが、この法定費用が守られていない。ベトナムには、国の認可を受けた送り出し機関が200以上あるが、手数料の相場は日本円で50万~70万円だという。この他に、保証金といった名目で、数10万円を支払うケースもある。

さらには、「日本で働きたいベトナム人を送り出し機関に紹介する現地ブローカーの存在もある」(同前))という。

たとえば、日本の受け入れ企業が、現地で直接、採用面接をすることがある。その際に技能実習生になろうとするベトナム人の側に、ブローカーが仲介に立つケースだ。面接で合格した場合、実習生はそのブローカーにカネを支払う。その金額は、日本円で5万~20万円といわれている。

こうした行為に対して、日本政府は現地の大使館を通じて、適正な手数料を徴収するよう指導しているが、まったく効果はない。

ベトナム人の技能実習生の場合、日本に来るまでに、すでに100万円前後の費用を支払っている例も珍しくはない。技能実習生になるために、親や親戚、銀行などから多額の借金をして、彼らは日本にやってくる。稼げると思っているからだ。

ところが、思うように稼げない。仕事も辛い。これでは借金すら返せない。それならば、いまの職場を逃げ出してほかで稼ごうとなる。

注目すべきもう一つは留学生だ。日本の大学や専門学校、日本語学校などで学ぶ留学生は、中国人の10万7000人、ベトナム人の6万1000人で全体の6割を超えている。

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