惜しくもベスト8には届かなかったが、日本中が西野朗監督の奮闘に称賛を送っている。短期間でチームを作り上げた、その手腕に迫る――。
「チームとすれば本意ではない。ただ、勝ち上がる中での戦略。選手も本意ではない。これからまた強いチャレンジに持っていく」
西野監督はポーランドとの大一番を終えた直後、絞り出すようにして第一声を発した。
ヨーロッパ屈指のストライカーであるロベルト・レバンドフスキへのパスを長友佑都や酒井宏樹らが防いだものの、後半に相手のフリーキックから失点。
乾貴士らを投入して巻き返しを図るも力およばず、日本は敗れても決勝トーナメントに進出するための戦術に切り替えた。
最終戦こそ薄氷を踏むような戦いになったものの、結果的に決勝トーナメントに進出できたのは、それまでの2試合で日本が期待以上の成果を出したからに他ならない。
この健闘ぶりには日本サッカー協会顧問の釜本邦茂氏も賛辞を送る。
「予選敗退が予想されていたが、それを覆して結果を出している。西野監督の見事な手腕です。試合に臨むうえで選手との間でプレーのイメージをしっかりと共有し、それに選手も見事に応えたことでチーム力が高まった。
柴崎岳や昌子源ら期待の若手をメインで起用しつつ、長年ともにプレーしているベテランの本田圭佑と岡崎慎司を一緒に途中出場させるなど、采配も冴えています」
振り返れば、前任のハリルホジッチ監督が電撃解任されたのは大会が差し迫った4月7日のこと。そのうえ、本田や岡崎ら、長年代表チームを支えてきた主力選手たちに衰えが見られ、下馬評段階では「史上最弱」とまで囁かれていた。
それが、蓋を開けてみれば1勝1敗1分けと予選同グループの強豪と互角以上に渡りあった。
現地で取材を重ねるサッカーライターの小宮良之氏が言う。
「ハリルホジッチをはじめこれまでの代表監督がとにかく『自分の戦術』にこだわりすぎたのに対し、西野さんはまず選手の特性を理解したうえで、うまく使う方法を探っている。
よく考えれば、香川真司や長谷部誠、酒井宏樹をはじめ、海外の一流チームで主力を張る選手がそろっており、実は戦力的に劣っているわけではない。
監督に求められていたのは、チームに一体感をもたせてモチベーションを高める『仕上げ』だった。西野さんはそれに成功したのです」