Photo by iStock

運賃は自由に決める。平成生まれベンチャーが進める「モビリティ革命」

弱冠25歳の創業者が、その哲学を語る

ベンチャー企業Azit(アジット)が、この夏、鹿児島県・奄美群島の与論島でドライブシェアアプリ「CREW(クルー)」の実証実験を行うとして、話題を呼んでいる。

現在日本では、金銭を受け取って自家用車で客を運送する――いわゆる「ライドシェア」は、「白タク行為である」として道路運送法で禁じられている。だが、CREWのサービスはこれに抵触しない。

CREWに登録するドライバーは一般の人だが、決まった「運賃」が存在しない。乗客が必ず支払うのはガソリン代や高速道路料金などの実費と手数料(マッチング手数料20円+システム監視などのサポート料1分あたり20円))で、プラスαの謝礼金額はあくまで「任意」で決められる。「謝礼0円」でも問題ない、ということが、CREWが違法ではない所以だ。

このサービスを支える理念は「互助モビリティ」だという。世界に類例のない発想は、どこから生まれたのか。ビジネスとして勝機はあるのか。Azit創業者で代表取締役CEOの吉兼周優氏(25歳)と、執行役員の鈴木暢之氏(28歳)に、哲学を聞いた。

与論島の海岸(Photo by iStock)

「ご近所さんに乗せてもらう」みたいに

――Azitを立ち上げたのは、慶應義塾大学理工学部の在学中だったそうですね。

吉兼:創業は2013年の11月で、僕がちょうど20歳の時でした。

大学2年からアプリの開発を手掛けていたのですが、その頃からモビリティには注目していました。向こう10年、20年を見据えた時に、おそらくモビリティが今のスマートフォンのように、様々なサービスのインフラになっていくだろうと考えていました。

――「善意」や「助け合いの精神」をベースにしたビジネスモデルは斬新ですが、普通免許の人が運転し、かつ「任意の謝礼」でビジネスは成立するのでしょうか? 

吉兼:100%、ワークするという確信があったわけではないんです。8月から始まる実証実験の結果を見てからでないと、何とも言えない部分はあります。

ただ僕自身は、日本という国だからこそ、このビジネスは成立する可能性があると考えています。

小学生の時、習い事に行くのに、隣の家のおばちゃんの車に一緒に乗せていってもらったりしていました。それに対して僕の親が時々、料理を持っていったり菓子折りをお渡ししたりしてお返ししていた。世の中はそういう風に成り立っているのだと当時から感づくところがありました。

こうした日常の風景の延長線上にあるサービスであれば、違法にならない形態があるのではないかと考えて、CREWを作りました。お互い助け合って生きていこう、信頼しあって生きていこうという精神は、島国の日本ならではだと思います。

――そもそもモビリティビジネスに着目したのは、どんなきっかけがあったのですか?

吉兼:大学時代に中国やインド、東南アジア、米国西海岸などを旅して歩いたのですが、帰国してつくづく日本、特に都市部は「電車社会」だな、と感じたんです。

僕は中学生の頃から毎日満員電車に乗って生活してきたので、そのことを特に苦痛だとは感じていなかったのですが、海外の人々の暮らし方を見ていると、「僕らにはもっと違う移動の仕方があるのではないか」と思うようになりました。

たとえば、僕らがやっているような「モビリティにネットワークを作る」ようなサービスがあれば、もっと効率的に配車や予約ができるようになりますし、近くにある空車に乗れれば移動のコストも下がります。

電気自動車(EV)や自動運転の技術が伸びてきているので、自動車が人や地球環境にやさしく合理的な移動手段になる機運も高まってきています。自宅から目的地までドア to ドアで向かう移動が増えれば、駅を中心とする都市部の生活スタイルは否応なく変わるでしょうし、当然、不動産価値も変わってくる。電車中心の広告の出し方も変わってくるでしょう。

モビリティが、「移動」だけでなく、いろんなものを変えていく可能性を秘めている、と思っています。